最新記事

エンターテインメント

コロナ禍で快進撃続くネットフリックス それを支える翻訳業界の裏側とは?

2020年7月24日(金)19時30分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

60〜90分のドラマ1本を3日で翻訳

まずは、字幕についてみてみよう。例えば、ゾンビ物×時代劇という異色の内容で人気を博したネットフリックスオリジナル制作のドラマ『キングダム』。疫病からゾンビ化が始まったことから、ウイルスと闘う姿が現在のコロナ禍とも重なって、配信直後から世界中で話題になった。合計190か国で配信され、27の言語で字幕制作が行われたという。

ネットフリックスは、字幕と吹替で分けて翻訳専門会社に仕事をまとめて依頼し、翻訳専門会社がフリーランサーの翻訳家へ依頼するシステムだという。約60〜90分のコンテンツを翻訳家1人が作業する期間は内容にもよるが3日間程度だ。 また、気になる報酬については、一般的に作品1作単位で計算されることが多いが、ネットフリックスの場合は時間(分)単位で計算されるため、翻訳作業が早い翻訳家の方が有利であると言われている。翻訳量が多い人で、月500-600万ウォンの収入を得ており、一般的には200万ウォン支払われているそうだ。翻訳専門会社によると、ネットフリックスやアマゾン・プライムビデオのOTTが定着してきたここ数年で、20-40代の翻訳家希望者が増えてきているという。

世界30カ国に支社をもち12言語で翻訳

では、声優を使った吹替はどうなっているのだろうか。こちらも字幕同様、需要が増えているという。本来吹替は字幕処理よりも10倍ほどお金がかかるので、吹替版を出すかどうかは作品ごとに見極めが必要だ。先ほどのドラマ『キングダム』の例を見ると、12言語で吹替版も作られた。担当した会社IYUNOでは、英語や日本語はもちろん、アジア、ヨーロッパ、北米など世界30カ国に支社をもち、マイナーなスウェーデン語、ノルウェー語などの吹替も行っているという。

自国映画が強い国では、字幕を読むよりも吹替を好む傾向がある。特にアメリカはその傾向が強く、ネットフリックスでいえば、70〜80%の人が外国語映画を見る際、吹替バージョンを選択しているそうだ。

ニューヨークタイムズ紙によれば、ネットフリックスは2019年、「英語ダビングクリエイティブマネージャー」という部署を新設して、米国俳優放送関係者労働組合(SAG-Aftra)と3年契約を結び、今後外国語映画やドラマの英語吹替コンテンツをより拡大する意欲を見せている。これで日本映画を含む非英語圏の映画が英語へ吹き替えしやすくなり、より多くの人に作品を見てもらうことができるだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米GM、通年利益予想引き上げ 関税の影響見通し額下

ワールド

ウクライナ北部で停電、ロシア軍が無人機攻撃 数十万

ワールド

ロシア大統領府、米ロ首脳会談の日程は未定 「準備が

ワールド

米政府閉鎖、国民は共和党を非難 トランプ氏支持率は
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 5
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 6
    米軍、B-1B爆撃機4機を日本に展開──中国・ロシア・北…
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 9
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 10
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 8
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 9
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 10
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中