最新記事

映画

韓国「アナ雪2」1000万人突破の影でディズニー訴えられる 大ヒットを支えた「ドベ」とは?

2019年12月15日(日)14時15分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネーター)

世界各国の対応は?

海外では、この独占問題はどのように対処されているのだろう。インディーズ映画にも理解が深く、映画館保護にも積極的なフランスでは、国内の映画館1館につき3スクリーン以上独占できないように法律で決まっている。また、小規模映画も積極的に上映できるよう、アート系映画館には支援金手当があり、総額で年間約21億円が支給されている。

また、映画の都ハリウッドを擁するアメリカでは、1948年に映画の製作・配給・上映を一手に握っていた5大メジャーを司法省が独占禁止法で訴えたいわゆる「パラマウント事件(Paramount Case)」がスクリーン独占に歯止めをかけた事例として有名である。連邦最高裁判所は、アメリカのメジャー映画スタジオに所有していた劇場の売却を命じた。1980年にこの規制は緩和されたが、今でもアメリカは各映画の独占率30%を超えていない。

では、日本ではどうだろうか? 日本も韓国同様シネコンが増え続けてはいるが、韓国のように過剰な独占上映は見られない。2016年に公開された大ヒット作『君の名は。』でさえ、東宝の自社配給にもかかわらず最高で40%程度の上映率だった。マニア気質の強い日本では、わざわざ映画館に足を運んで観に行くような多様な映画を上映することによって客足をつなぎとめているようにも思える。

こうしたなか、韓国でもついに2020年、スクリーン独占禁止についての映画法案ができるという。観客に人気の映画のみ上映しすぎて起こった今回の騒動はいかにも韓国らしいが、それに対して素早い対応をできるところもいかにも韓国らしい。

シネコンチェーンを所有する映画会社3社が長らく力をもち続けた結果、このような問題が起きてしまった。映画館は観客に映画の趣向を押し付けるものではない、選んでいただく立場である。ここらで一度法規制によって映画の多様性を尊重すれば、今後様々な映画が製作・輸入され、結果的に韓国の映画界を盛り上げていくことにつながるだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ大統領、ベネズエラとの戦争否定せず NBC

ビジネス

独経済回復、来年は低調なスタートに=連銀

ビジネス

ニデック、永守氏が19日付で代表取締役を辞任 名誉

ビジネス

ドル157円台へ上昇、1カ月ぶり高値 円が広範にじ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 7
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中