最新記事

映画

『ビューティフル・ボーイ』薬物依存症の青年と父の苦闘の物語

Boy Interrupted

2019年4月17日(水)13時10分
ジャック・ジョンフェルド

シャラメがニック役のオーディションを受けたのは20歳のとき。業界関係者以外にはほとんど知られていない存在だったが、昨年9月にこの映画がトロント映画祭で初上映されたときには、既に若い女性たちのアイドルになっていた。

映画祭でシャラメと行動を共にしたニックは、その人気に驚いたと言う。「レストランの前に女の子たちがずらりと並んでいて、僕らは裏口からこっそり逃げ出した。まるでビートルズと一緒にいるようだったよ」

実は『ビューティフル・ボーイ』というタイトルは、故ジョン・レノンから「もらった」ものだ。デービッドは80年にプレイボーイ誌の仕事で、レノンと妻のオノ・ヨーコを取材した。その記事はレノンの最後のインタビューとなった。

取材の日、ジョンとヨーコはスタジオで息子のショーンのために書いた曲「ビューティフル・ボーイ」をレコーディングしていた。インタビューを掲載した雑誌が出て2日後、レノンはファンに殺された。

magc190417-boy02.jpg

実際のシェフ親子 SHAWN EHLERSーWIREIMAGE/GETTY IMAGES

ニックの問題で闘い続けている間、デービッドは音楽を聞くと抑えていた思いがあふれ出したと話す。下の2人の子供を連れてスーパーに買い物に行ったときのこと。店内に流れるエリック・クラプトンの「ティアーズ・イン・ヘブン」(転落事故のために4歳で死亡した息子への思いを歌った曲)を聞いて、「その場に立ち尽くした」という。幼い子供たちは「スーパーで突然泣きだした父親を見てうろたえていた」そうだ。

依存症からの回復プロセスは一筋縄ではいかない。「希望が見えたかと思うと失望し、失望の後には絶望が続き、そして運がよければ、また希望がほの見える」と、デービッドは言う。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、円は日銀の見通し引き下げ受

ビジネス

アップル、1─3月業績は予想上回る iPhoneに

ビジネス

アマゾン第1四半期、クラウド事業の売上高伸びが予想

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任し国連大使に指
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中