最新記事

日本生まれのインスタントラーメン、韓国で育ち過激な味に 里帰りでブーム呼ぶか?

2019年2月23日(土)10時15分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)

韓国でトップシェアの農心は辛ラーメンで世界各国に進出。写真はカナダ・トロントのスーパーに並ぶ辛ラーメン。 Chris Helgren - REUTERS

<安藤百福が発明したインスタントラーメンは今や世界中で愛される存在に。それぞれの国の味に育ち、なかには日本に逆輸入されるものも──>

今や日本の国民食ともいえる「ラーメン」。その人気は日本だけにとどまらず海外でも注目されている。もちろん、お隣りの韓国でもラーメンブームを巻き起こすほど定番の外食メニューだ。今ではお店で食べる日本のラーメンスタイルも定着しているが、ひと昔前までは韓国でラーメンといえば「ラミョン」と呼ばれるインスタントラーメンを指していた。

その消費市場規模は2018年度1兆6005億ウォン(韓国農水産食品流通公社発表)。2016、2017年には人口1人当たりのインスタントラーメン消費量世界1位(世界ラーメン協会資料)になるほどで、まさに国民食になっている。

これはただ単に即席麺を食べるだけでなく、韓国料理にも材料として使われていることが影響している。韓国では辛い鍋料理に即席麺を入れて食べるスタイルがあり、特にブデチゲと呼ばれる鍋料理には必要不可欠な食材だ。この鍋用の麺(粉末スープなどは入っておらず、麺のみ入ったもの)は「サリ」と呼ばれ、スーパーなどで簡単に手に入る。お店などで麺のみ追加するときもサリを注文すればよい。また、韓国人男子にとってラーメンは軍隊生活の必需品だ。鍋を使わず袋タイプのインスタントラーメンを開け、そのまま直接熱湯を入れて器用にラーメンを作って食べるのを披露してくれた友人もいた。

ソウル中心部を流れる漢江の川辺でラーメンを食べるというのも定番で、近くのコンビニにはラーメンを作れるようお湯はもちろん最近では機械の導入までされている。お酒好きの人が多い韓国では、深酒をした翌日には辛いインスタントラーメンを食べることが多い。このように韓国人にとってインスタントラーメンは生活に無くてはならないほど根付いており、世界1位のインスタントラーメン消費国になるのも当然といえる。

ソウルなどで増える日本のラーメン専門店

一方で、日本式の生麺を調理したラーメン専門店が韓国に浸透していったのは2000年代に入ってからだ。韓国人が日本料理に関心を持ち、食を目当てに日本旅行を楽しむようになって本場日本のラーメンを求めるようになったようだ。

ちょうどその頃、韓国では日本式居酒屋ブームが起こった。日本酒が飲めて日本の居酒屋メニューを食べることができるスタイルで、内装も日本的に作られている。現在はラーメン専門店が多く点在するが、当時は昼のランチタイムはラーメン店、夜は居酒屋というお店も多かった。

韓国でのラーメン店はソウル市内や都市部を中心にあり、特に若者が多く集まる弘大(ホンデ)エリアにはラーメン店が多い。本格的に日本のチェーン店が進出していたり、店員を日本から呼び寄せて日本の味をそのまま伝えるこだわりを持った店が多いようだ。韓国の若者が日本に旅行した際に本場の味を堪能する機会が増え、自国でもその味を求める人が多いのだろう。

もともと、日本料理は韓国人にとって「塩辛い」「脂っこい」といわれることが多い。特にラーメンの場合、辛いインスタントラーメンの味に馴染んでいた韓国人にとって日本のラーメンはそう言われることが多かった。

しかし、一番脂っこい豚骨味が韓国で人気を集めていることを見ると、味の趣向も変わってきているように見える。実際、筆者の友人にも辛い物が苦手でキムチを食べないという韓国人の若者が数人いる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ゴールドマン、米景気後退確率30%に引き下げ 関税

ビジネス

米政府、現時点でボーイング787の運航停止命じず 

ワールド

トランプ氏、イラン核問題の外交的解決に引き続きコミ

ビジネス

カリフォルニアなど11州、議会の自動車規制無効化決
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 5
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 6
    【動画あり】242人を乗せたエア・インディア機が離陸…
  • 7
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 8
    【クイズ】今日は満月...6月の満月が「ストロベリー…
  • 9
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 10
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 3
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 4
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 5
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 6
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 7
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全…
  • 8
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 9
    プールサイドで食事中の女性の背後...忍び寄る「恐ろ…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中