最新記事

クロストーク

文化財もアスリートもアニメも...境界を越えるコミュニケーションの未来へ

PR

2016年10月11日(火)12時00分

奥窪 凸版印刷は東京国立博物館と共同で、同館内に「TNM & TOPPANミュージアムシアター」を設置し運営しています。ここではVRによる文化財の新しい鑑賞方法を体験することができます。例えば、通常は展示ケースに入っているような国宝や重要文化財に指定されるような茶壺を実際の茶室の中で観る体験はなかなかできませんが、VRではその場で実際に観ているかのような体験ができます。

NW_WFSC-4.jpg

VRの技術を使えば、これまでにはあり得なかったような方法で貴重な文化財を鑑賞できる。
VR作品『洛中洛外図屛風 舟木本』(監修:東京国立博物館 制作:凸版印刷株式会社)

 一般的に、博物館に行って展示されている文化財を観ても、説明なしにその魅力を感じるのは難しいものです。そこで、VR技術を用いて、文化財を実際には観ることができない場所や角度で鑑賞したり、博物館の学芸員などの学術監修のもと制作当時を再現することで、文化財の新たな魅力を伝えようとしています。

沖田 精神や身体とテクノロジーとの融合も可能性がありそうですね。

奥窪 バーチャルと身体との関係では、例えば茶室はその中に入って宇宙を感じるための空間ともいえます。そういう意味では、茶室の空間はバーチャルでもある。たぶん視覚だけではなくて、茶室のにじり口から体を曲げて入ることや、正座をして器を持つことなど、五感を研ぎ澄ますことによって、新しいバーチャルな空間が生まれる。身体の動きや意識が交信して何か新しい発想とか、そういったものに繋がるのではないかということを考えています。

小林 文化財をVRの技術で再現すると、改めて日本の素晴らしさを理解するきかっけにもなるのではないでしょうか。技術の素晴らしい掛け算だと思います。

アスリートとの関係をITで変えていきたい

NW_WFSC-2.jpg

サイバードのコンテンツ事業本部で、日本国内のサーファー向けに有料で波情報の配信サービスを行う「なみある?」を担当する小林孝夫氏。ワークショップのテーマは「企業は、アスリートと国民の絆を結べるか?――企業とアスリートが直接つながり、WinWinの関係を構築できる新たな相互支援のあり方を考える」

――リオデジャネイロ・オリンピックでは日本選手の活躍が目立ち、一方でマラソンや登山など「する」スポーツも広がりを見せています。アスリートと企業、国民の関係をテーマとしていますが、スポーツを楽しむ層の拡大はどのような影響を及ぼすでしょうか。

小林 スポーツをする人が増えれば、スポーツを観る人も増えていく。スポーツに関する消費額が増えるため、スポーツ市場全体が大きくなり、それによってアスリートの価値が高まります。企業がアスリートを支援する目的のひとつに宣伝塔としての期待があり、アスリートの価値が高まれば、もちろんその効果は大きくなります。そして、アスリートが多くの人たちと関わる環境が生まれれば、アスリートの人格形成や自立性の向上にも貢献します。

奥窪 アスリートへのスポンサードの在り方が、インターネットの発展によって大きく変わりつつあると言われていますね。

小林 SNSの登場は、アスリートの影響力を可視化できるようになった事例だと思います。SNSでフォロワーが何人いるのかという、数字で語られるようになったところが大きく変わった点です。

奥窪 アスリートと企業、国民の理想の関係というものがあると思いますが、それを実現するにあたり他に考えていることはありますか。

小林 例えば、オリンピックで日本人選手がメダルを取って注目されても、人気が一過性で終わってしまうことはすごくもったいないなと思います。その人気が続く環境をITでどのようにつくっていけるか。アスリートのその後の活動などを含めて、ITによって解決できる情報の伝え方を考えていきたいと思います。

NW_WFSC-5b.jpg

日本のサーフィン市場をどう盛り上げていくかが問われている、と小林氏。2016年8月、追加種目への正式決定を受けて日本サーフィン連盟が主催した記者会見(提供:Namiaru?)

沖田 私はサッカーが好きなので、残念だったのはなでしこジャパンですね。2011年のワールドカップで優勝して、2012年のロンドン・オリンピック大会で銀メダルを取って、でもリオ・オリンピックは予選で敗退してしまいました。人気が一過性だったために、選手の置かれている環境はなかなか改善していません。こうした問題についての議論は、今後スポーツを考えていく上で必要になっていくでしょうね。

――アメリカに野球を観に行くとか、欧州にサッカーを観に行くといった形で、外国人が日本にスポーツを観に来るという話はあまり聞きません。日本はそうした意味でのスポーツ大国になれると思いますか。

小林 なれると思います。日本人選手の場合、フィジカルな面で不利なところはあります。しかし、スポーツの見せ方を変えることができるのもITやIoTの技術だと思います。例えば、ネットメディアでスポーツが放送されると、付加価値のある情報を加えることによって、今までスポーツに興味のなかった人も面白いと思うかもしれない。

奥窪 見せ方も含めてスポーツをコンテンツとして捉えるという考え方には、はっとさせられました。見せ方が面白いから日本のスポーツを観に来るというのは、非常に可能性があると感じますね。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日銀の買入方針も念頭に置き、国債の安定的な消化に努

ビジネス

お知らせ=重複記事を削除します

ビジネス

MSCI、韓国株式市場で空売りアクセス改善と発表

ビジネス

香港ドル、対米ドル変動幅下限に下落 2年ぶり
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 3
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「過剰な20万トン」でコメの値段はこう変わる
  • 4
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 5
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
  • 6
    全ての生物は「光」を放っていることが判明...死ねば…
  • 7
    マスクが「時代遅れ」と呼んだ有人戦闘機F-35は、イ…
  • 8
    下品すぎる...法廷に現れた「胸元に視線集中」の過激…
  • 9
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越しに見た「守り神」の正体
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 8
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 9
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 10
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 5
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 6
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 7
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中