最新記事

健康

「女性用バイアグラ」の正しい基礎知識

安易な俗称が誤解を招く。女性の性欲低下を治療する新薬の効果は?

2015年9月8日(火)17時30分
エイミー・ノードラム

注目度は抜群 女性の性欲低下は薬で治せる症状なのか、という議論も続いている Juanmonino-iStockphoto

 米食品医薬品局(FDA)は先週、女性の性的欲求低下障害(HSDD)の治療薬フリバンセリン(商品名アディー)を承認した。「女性用バイアグラ」として話題になっているが、男性の勃起不全(ED)治療薬との比較は誤解を招きかねないと、専門家は警鐘を鳴らす。

「バイアグラが爆発的に売れたから、女性の性的問題に関する薬は何でも『女性用バイアグラ』と呼ばれるが、実際はかなり違う」と、ニューヨーク大学医学大学院の心理学者レオノア・ティーファーは言う。

 そこで、フリバンセリンの基礎知識を学んでおこう──。

バイアグラとは「効き方」が異なる

 バイアグラは性器の血流を改善して勃起を促進するのに対し、フリバンセリンは脳の中枢神経系に働き掛ける。

「ドーパミンの分泌を促し、(気分障害などに関係する)2種類のセロトニンを調整する」と、サウスフロリダ結婚・性の健康センターのスタンリー・アルトホフ事務局長は言う。

 ティーファーは抗鬱剤に例える。実際、フリバンセリンは抗鬱剤として開発中に、性欲促進の効果があるかもしれないと気付いたことが誕生のきっかけだ。

すぐには効かない

 バイアグラは性器の血流に直接働き掛けるため、服用後すぐに効果が表れる。それに対し、臨床試験でフリバンセリンを毎日服用した女性が、偽薬を服用した女性に比べて性的問題が改善されたのは、服用開始から4週間後だった。ティーファーによると、「効果のピーク」は服用開始から8週間後だった。

 バイアグラは必要なときだけ服用し、45分以内に効果が表れるが、フリバンセリンは毎晩服用しなければならない。

効果がない女性もいる

 製造元のスプラウト・ファーマシューティカルズは、アメリカ人女性の10人に1人、最大1600万人の治療に役立つだろうとみるが、これはHSDDを抱える人のごく一部にすぎない。同社によれば、アメリカの成人女性の3人に1人が性欲低下に悩んでいるのだ。

 多くの女性は、生活を変えてストレスを軽減する、抗鬱剤の服用をやめる、恋愛カウンセリングを受けるなど、投薬以外のほうが効果は高いかもしれないと、アルトホフは言う。

 さらに、臨床試験に参加した女性は結婚期間が平均10年で、5年近くHSDDに苦しんでいた。一時的に性欲低下を経験するという女性には、新薬は向いていないかもしれない。

劇的な効果はない

 フリバンセリンを服用した女性は、満足を得た性行為の回数が月に平均4.4回。偽薬を服用した女性は平均3.7回。臨床試験前の調査では平均2.7回だった。

「バイアグラや同種の薬は、男性の大多数に確実な反応をもたらす。フリバンセリンはほどほどだ」と、アルトホフは言う。FDAが過去2回、承認を見送った理由の1つも、効果があまり高くないからだ。

 それでもHSDDに悩む女性にとって、月に1回でも満足を得られる性行為ができれば価値はあるかもしれないと、アルトホフは付け加える。

懸念される副作用

 6月にFDAの諮問委員会で承認に賛成した人々は、失神、吐き気、血圧低下などの副作用について、ラベルに明記するだけでなく改善策が必要だとスプラウト社に忠告した。「同時に服用してはいけない処方薬の名前が列挙され、アルコールと一緒に服用しないことなど、多くの注意事項が記されるだろう」と、ティーファーは言う。


 10月には発売の見込みだ。正しい理解の下、女性たちの心強い味方になればいいのだが。

[2015年9月 1日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国首相、フォーラムで一段の経済開放約束 日本企業

ワールド

G7、エネ供給支援へ必要な措置講じる用意 外相声明

ワールド

トランプ氏、米空港にICE捜査官派遣と警告 予算巡

ワールド

トランプ氏、イランに48時間以内のホルムズ開放求め
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 2
    「カメラの目の前」で起きた爆発の瞬間...取材中の記者に、イスラエル機がミサイル発射(レバノン)
  • 3
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 ──「成功」が招く自国防衛の弱体化
  • 4
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 5
    人気セレブの「問題ビデオ」拡散を受け、出演する米…
  • 6
    スウェーデン次期女王ヴィクトリア皇太子、陸軍訓練…
  • 7
    「筋力の正体」は筋肉ではない...ストロングマンが語…
  • 8
    トランプ政権の「大本営」、イラン戦争を批判的に報…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 4
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 6
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 9
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 10
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったの…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中