最新記事

映画

スピルバーグ的ゴジラの成功術

2014年6月23日(月)15時38分
フォレスト・ウィックマン

 結局、ロイやジョーの推理は正しかったことが判明する。2人とも政府が汚染を理由に立ち入りを禁じた場所に忍び込むが、ガスマスクを外してみれば空気は何ともない。立ち入り禁止は、政府が極秘裏に未知の生物を研究するための方便だったのだ。

 怪獣の在り方も『未知との遭遇』のエイリアンに似ている。『GODZILLA』に登場するゴジラと敵の怪獣ムートーは、不気味な静寂の中から姿を現す。身体に熱エネルギーをため込んでいるため、行く先々で停電を起こし、電子機器をシャットダウンさせる。

 これもスピルバーグが使った手だ。『未知との遭遇』でも『宇宙戦争』でも、エイリアンは電磁波で電子機器を故障させてから現れる。『ジュラシック・パーク』の恐竜に電磁波を発生させることはできないが、それでも停電中に電気柵を破って登場する。

『GODZILLA』の怪獣が路面電車を脱線させるシーンは、『ジュラシック・パーク』で恐竜が自動車をひっくり返す場面をそのまま失敬したようだ。

昔のドライな作風が手本

 エドワーズと撮影監督のシェーマス・マクガービーは、技術面でもスピルバーグの手法を踏襲した。スピルバーグが『ジョーズ』や『未知との遭遇』、『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』を撮った特殊なアナモルフィック・レンズを使い、1対2・35の縦横比を採用した。

 映像表現にもスピルバーグ色が感じられる。特に顕著なのが、未知の生物や物体を呆然と見詰める「スピルバーグ的表情」だ。『GODZILLA』の登場人物たちは、あちこちで起きる異常事態に目を丸くする。

 闇を貫く懐中電灯の明かりや光の筋もスピルバーグがよく使う構図。さらに映画評論家のマット・ゾラー・サイツが「撮ったというより描いたような」「絵本のような」と評した空の独特な質感も、元は巨匠のトレードマークだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英BP、第3四半期の利益が予想を上回る 潤滑油部門

ビジネス

中国人民銀、公開市場で国債買い入れ再開 昨年12月

ワールド

米朝首脳会談、来年3月以降行われる可能性 韓国情報

ワールド

米国民の約半数、巨額の貿易赤字を「緊急事態」と認識
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中