最新記事

スポーツ

「指導者なし、練習は週2回」東京理科大の陸上部員が学生日本一を獲得できた「秘密」とは

2021年11月7日(日)09時34分
酒井政人(スポーツライター) *PRESIDENT Onlineからの転載
陸上競技のトレーニング

根性・努力至上主義のトレーニングは目的を見失いがちだ。*写真はイメージ imtmphoto - iStockphoto


1位に輝いたのは東京理科大1年生――。9月に行われた大学生の陸上競技大会(日本インカレ)で"珍事"が起きた。スポーツライターの酒井政人さんは「メジャー種目の400mで陸上強豪の大学の選手を差し置いて勝ったのは、全体練習は週2で自前のトラックもない東京理科大の選手。その背景には、根性・努力至上主義のチームにはない頭を使った練習のしかたにある」と指摘する――。


全体練習は週2回の東京理科大1年生が日本インカレ優勝の"珍事"

今年9月に行われた日本学生陸上競技対抗選手権大会(日本インカレ)。1928年に第1回が開催された歴史ある大会の各種目で今回チャンピオンとなった選手の大学は、東洋大、城西大、東海大、順天堂大、早稲田大、明治大、筑波大、日本大、福岡大といった強豪大学が大半だ。

そんな中、異彩を放つ大学が1校あった。東京理科大だ。同大は、講義内で学生に大量のレポートや実験など学業が大変なことで知られている。

この日本インカレで見事1位に輝き東京理科大史上初の快挙を果たしたのは、実力者がひしめくメジャー種目「男子400m」に出た友田真隆だ。なんと1年生である。しかも、自己ベストとなる46秒35で制した。

同大会は例年、私立大選手の活躍が目立つ中、東京大、京都大、名古屋大など旧帝国大の選手が表彰台に立つこともある。だが、東京理科大の選手が1位になることはそれ以上の"ニュース"だ。

東大、京大、名古屋大は卒業生を含めれば、いずれも陸上競技のオリンピアンを輩出したことがある。陸上部は伝統があり、キャンパス内にトラックもある。勉強が大変とはいえ、強豪大学に近い練習環境でトレーニングを行っており、大学で急成長する選手もいる。

一方の東京理科大はキャンパス内にトラックはない。そのなかで、1年生がどのようにして学生一まで上り詰めることができたのか。他大には自分よりキャリアも実績も上の先輩たちをいるのに、なぜそれを上回る結果を出せたのか。

なぜザ・体育会系の選手に学業第一の大学の選手が競り勝てたのか

友田は埼玉県の私立男子校の川越東出身。文武両道を掲げる進学校である。高校時代は薬学部を目指しながら陸上部に所属して練習に励んだ。昨年10月に行われた全国高校大会の男子400mで優勝している。当時のベスト(46秒51)は、昨年の高校ランキングトップだった。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:現実路線に転じる英右派「リフォームUK」

ビジネス

ネクスペリア中国部門「在庫十分」、親会社のウエハー

ワールド

トランプ氏、ナイジェリアでの軍事行動を警告 キリス

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 5
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 6
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 7
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 8
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中