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加齢を味方につけたアスリートに学ぶ、トレーニング法・疲労回復法

2020年4月10日(金)15時35分
船越隆子 ※編集・企画:トランネット

38歳となった今も第一線で活躍し続けるプロテニス選手、ロジャー・フェデラー Mike Hutchings-REUTERS

<30歳を過ぎてサッカーを始めたジャーナリストが、歳を取っても活躍し続けているトップアスリートやトレーナー、研究者を取材。アマチュアのスポーツ愛好家にも役立つ、年長者でも運動で成果を出し続けられる方法とは?>

マラソンはお好きですか?――ひと昔前なら、マラソンは見るものだった。でも今は、走る。

市民ランナーが参加するマラソン大会も増えたし、ふだんから公園でジョギングをする姿もたくさん見かける。しかも、若い人たちだけではない。40代、50代、60代、いや、もっと年輩の人たちも走っている(新型コロナウイルスの感染防止のため、各地で外出自粛が要請されている今、走る機会が減ってもどかしい思いをしている人もいるだろう)。

アマチュアのマラソンランナーだけではない。「若いほどスポーツのパフォーマンスは高いはずなのに、近年では年長のアスリートが目覚ましい成果を出し、しかもそれを継続している」として、「加齢を味方につけろ!」と銘打つのが『アスリートは歳を取るほど強くなる――パフォーマンスのピークに関する最新科学』(筆者訳、草思社)。

著者のジェフ・ベルコビッチは、スポーツ選手でもなく、スポーツライターでもなく、ジャーナリストである。

スポーツ好きの彼が、30歳を過ぎて始めたサッカーに夢中になり、息切れしたり臀部や腰を痛めたりと悪戦苦闘するなかで、昔ならとっくに引退していただろう年齢になっても活躍しているトップアスリートたちが気になり、その秘密を探っていく。でき得るなら、アマチュアの自分にも参考にできることが見つかるかもしれない、という期待もこめて。

本書に登場する選手、あるいは実際に彼がインタビューしたり、トレーニングしたりした選手陣はまさにスターであり、豪華だ。

2015年のボストンマラソンを39歳で優勝したメブ・ケフレジギに始まり、先日、悲しくも飛行機事故で亡くなったNBA(全米プロバスケットボール協会)のレジェンド、コービー・ブライアント。NFL(全米プロフットボールリーグ)のペイトン・マニング、テニス界のトップを走るロジャー・フェデラーとラファエル・ナダルに、米国陸上の中距離選手ヒラリー・ステリングワーフ。そして、なでしこジャパンとの対戦で日本でもよく知られている米国女子サッカー界のスター、カーリー・ロイドも。

錚々たる面々だが、彼らを育てる側の監督やコーチ、トレーナーたちも、それぞれに個性があり、そのアイデアや努力が興味深い。

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takoburito-iStock.

激しいトレーニングだけでは長く現役を続けられない

長くトップアスリートでいられるような選手なら、苦痛に耐え抜いて、それこそハードなトレーニングや身体づくりをしているはずだという我々の固定観念は消し去られる。激しいトレーニングだけでは、身体はすぐに消耗し、長く現役を続けられないのだ。

逆に、時間を区切って段階的にトレーニング内容を変えていくピリオダイゼーションや、複数の運動を組み合わせるクロストレーニング、あるいは日本人が考案した加圧トレーニングなどを用いて、いかに効率よくトレーニングをするか、疲労をためこまずに回復するか。睡眠や栄養をどう味方につけるか、といった工夫が大切になる。

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