外国人の派遣社員39.9万人は「異常な数」...ビザ別に見ると分かる就労制度の抜け穴・問題点
こうした背景を踏まえて、この領域の問題を考えていくことにしましょう。
出自からして無理があった技能実習生制度
外国人技能実習生という制度には、とみに批判が集まりがちです。それは無理もないことでしょう。前述の通りこの制度は、「外国人の単純労働を認めたくない」という声が根強かった平成初期に、何とか抜け道をつくろうと、いわば庶子として生み出された制度だったからです。
・就労ではないと言い張るため、研修制度という立て付けになっている。
・その趣旨は、「技能的に遅れている国に、日本の先端技能を移転する」ためとした。
・だから、技能的でない分野=一般的な販売・サービス・宿泊業などは対象から外され、第一次・第二次産業が受け入れの中心となった。
・にもかかわらず、原則、労働44基準法の対象となり(一部職務除く)、最低賃金や社会保険などの対象ともなる。
こうした歪な制度だったために、その後、「就労目的」と改める方向で改正案が出されましたが、外国人就労に厳しい世論を恐れ、それが否決されてきたという歴史があります。
そうした中で、人口減少は続き、人手不足は深刻さを増していきます。そこで2019年に「特定技能」という新たな査証がつくられ、広く現業職での外国人就労が可能になりました。こちらは、第一次・第二次産業に留まらず、飲食業や宿泊業、自動車運送業などでも就労が可能です。
こうして外国人の就労が広く認められてしまうと、「技能実習生」を研修だと言い張ることや、母国への技能移転という名目など、必要性が希薄になります。そこでこの制度は、2027年から「育成就労」と名を変え、出直すことになりました。こうしてようやく、「抜け道ゆえの不整合」が取り除かれつつあります。

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[筆者]
海老原嗣生(えびはら・つぐお)
サッチモ代表社員。大正大学表現学部客員教授。1964年東京生まれ。大手メーカーを経て、リクルートエイブリック(現リクルートエージェント)入社。新規事業の企画・推進、人 事制度設計などに携わる。その後、リクルートワークス研究所にて雑誌「Works」編集長を務め、2008年にHRコンサルティング会社ニッチモを立ち上げる。『エンゼルバンク―ドラゴン桜外伝』(「モーニング」連載、テレビ朝日系でドラマ化)の主人公、海老沢康生のモデルでもある。近著『静かな退職という働き方』(PHP新書)が各方面で話題を呼んでいる。





