コメ価格5キロ4000円時代を容認? 鈴木農相の「減反維持」発言に見る農政の後退

2025年11月5日(水)17時00分
山下一仁(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)*PRESIDENT Onlineからの転載

逆進性は「直接支払い」で解消できる

アメリカは、60年以上も前から、高い価格(消費者負担)ではなく財政からの直接支払いで農業を保護する政策に切り替えている。こうして安い価格を実現した上、農業予算の3倍を低所得者向けの食費補助に充てている。

EUも1993年に価格支持から直接支払いに大きく舵を切った。かつては日本と同じく消費者負担型の農政だったが、今では、農業保護に占める価格支持の割合は2割以下だ。

農業保護に占める消費者負担の割合


国産を守るため外国産小麦に「課徴金100%」

これに対して、日本では、例えば、消費量の14%に過ぎない国産小麦の高い価格を守るために、86%の外国産麦についても100%近い課徴金を課して、輸入価格の倍の値段で製粉企業に売り渡し、消費者に高いパンやうどんを買わせている。

小麦の輸入制度と価格支持から直接支払いへの政策変更の効果

食料自給率の低い日本の場合、小麦のように、消費者は国産麦だけではなく輸入している外国産麦にも高い価格を払っているので、消費者負担は大きい。

この農業保護による消費者負担は、2~3%の消費税に相当する。国内農産物価格と国際価格との差を直接支払いで補填するだけで、消費者にとっては、国内産だけでなく外国産農産物の消費者負担までなくなるという大きなメリットが生じる。

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