アベノミクスの「生みの親」が説く、高市政権が取るべき経済政策...「安倍時代とは状況が異なる」

SANAENOMICS AND ABENOMICS

2025年10月31日(金)15時10分
浜田宏一(元内閣官房参与、米エール大学名誉教授)

日銀の植田和男総裁とパウエルFRB議長

日銀の植田和男総裁(右)とパウエルFRB議長 NATALIE BEHRING/GETTY IMAGES

ところが20年の新型コロナ危機後に世界は反転する。アメリカがコロナに対して需要拡大を行ったのはよいが、ある所でそれが行きすぎ、金融の引き締めが必要になる。当時のジョー・バイデン米大統領がインフレを制御できなくなり金融引き締めを始めると、変動相場制度のメカニズムでは貿易相手国、例えば日本に対してそれは需要の増加として影響が及ぶ。円が急速に下落し、日本の輸出品がどれだけの輸入品と交換できるかを示す交易条件も下がり続けた。日本の観光市場が投げ売り同然の状態であることも同様で、円安のため輸出する財やサービスを買いたたかれている。

日本が失業や過剰設備に悩まされているとき、多少の安売りは雇用や生産量を増やすのでよい。アベノミクスはこの効果も利用した。しかし、現在は有効求人倍率が深刻な人手不足を示している。円安はむしろ日本経済のインフレ圧力とその弊害を増やすばかりである。


変動相場制度に日本が移行してから、日本経済がどのような為替レートの下にあったかを見てみよう。戦後の時系列の為替レートは、日本経済が1971年のニクソン・ショックや85年のプラザ合意などでいかに為替レートにもてあそばれていたかを示すので興味深い。安達誠司・元日銀政策審議委員が『円の足枷(あしかせ)』という言葉で表したとおりである。

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