アベノミクスの「生みの親」が説く、高市政権が取るべき経済政策...「安倍時代とは状況が異なる」

SANAENOMICS AND ABENOMICS

2025年10月31日(金)15時10分
浜田宏一(元内閣官房参与、米エール大学名誉教授)

為替レートの推移を示したグラフ

「円高指数」の推移

図1は、慶應義塾大学産業研究所の野村浩二教授による戦後の為替レートの推移と、日米間の生産コストを均等化させるような為替レートの推移を示したグラフである。それによれば、最近の推計値は1ドル=97円であるという。

図2は、戦後日本経済70年における「円高指数」の推移であるが、これが1.0より低いときには、日本の産業は平均して外国(アメリカ)よりも生産費が安く、日本経済はより輸出しやすい環境にある。1.0よりも大幅に下回るようだと多くの市場で何を作ってもそのまま売れ、輸出できるようになる。国民経済にはインフレ圧力がかかる。


逆に1.0より高いときには、平均的に国内産業のほうが為替レートで換算するとコスト高になる。企業は収益を犠牲にし、労働賃金などのコストを節約しようとする。日本経済全体はデフレ圧力を受ける(これを野村教授は価格水準指数〔PLI〕が1より大きいと表現した)。

黒田総裁はこのような状況だったアベノミクス以前の日本経済を受け継いだが、異次元緩和で為替レートを事実上円安に調整し、PLIを引き下げた。つまりアベノミクス以前の金融引き締めの効果を逆転し、日本を高圧経済へ導いた。財務官だった黒田氏は、円レートに基本的に影響するのは為替介入など財務省の政策でなく、日銀の金融政策と知っていたのである。

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