アベノミクスの「生みの親」が説く、高市政権が取るべき経済政策...「安倍時代とは状況が異なる」

SANAENOMICS AND ABENOMICS

2025年10月31日(金)15時10分
浜田宏一(元内閣官房参与、米エール大学名誉教授)

アベノミクスが始まる前、日銀には金融引き締めを支持する総裁が続いていた。そのため日本の金融は引き締め模様であり、それが為替の円高を生み、国内で生産しても為替レートのせいで国外に売れない状態が続いていた。

アベノミクスの追い風を受けつつ「異次元の金融緩和」を求めた当時の黒田東彦総裁は、日本を円高と需要不足で失業に悩まされる低圧経済から、需要が供給をわずかに上回る高圧経済に移行させた。第2次安倍政権が発足した2012年末から新型コロナウイルスが日本を襲う20年までに、日本経済は女性を主体として約500万人の雇用を増加させた。


固定為替相場制度とは異なり、変動為替相場制度の場合には、一国の通貨拡張政策は他国の景気にプラスでなくマイナスの効果として働く。08年のリーマン危機に諸外国は貨幣増発で対応したが、日本は貨幣拡張のメカニズムで対応すべきところ、日銀がそれに十分対応できなかった。そのため円が品不足となって円高が生じ、長期にわたるデフレが生じた。フィリップス曲線(編集部注:インフレ率が上がれば失業率が下がり、インフレ率が下がれば失業率が上がることを示す曲線)の関係で、失業も増加した。生産性を増すのも、低圧経済で経済が縮小しているときより、高圧経済で経済が伸びているときのほうがよい。各国が緩やかなインフレ目標を採用したのも、社会の総需要が総供給よりわずかに高いほうが望ましいからである。

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