最新記事
円相場

円安を支える「見えざる力」...静かな円売りの正体、80兆円投資と為替の行方は?

2025年9月2日(火)14時26分

トランプ氏が就任した今年1月。どんな奇策が打ち出されるのか世界中が身構える中、財務省が集計する日本の対外投資額は差し引き1.4兆円と、月間で2年ぶり低水準にとどまっていた。それが、トランプ氏が対米投資を繰り返し呼びかける中で次第に盛り返し、6月には5兆円超と過去2番目の高水準にまで膨らんだ。

6月は日本製鉄が米鉄鋼大手USスチールの買収を141億ドル(約2兆円)で完了させたタイミングで、一時的に金額が膨らんだ面もある。だが、1─6月累計で見ても16.1兆円と、年間で過去最大となった前年同期を1割近く上回るペースで推移している。


 

財務省のデータは6月が最新だが、7月以降も米国を中心に海外企業に対する買収や出資は続いている。1000億円を超えるものだけでも、住友生命保険やオリックス、三菱商事、日本郵船、ソフトバンクグループ、SOMPOホールディングスと相次いで発表されている。

市場では「海外に成長の場を広げるしかない日本企業の大型買収が増えており、当然(円が売られて)ドルの下支えになる」(三井住友銀行市場営業部為替トレーディンググループ長の納谷巧氏)との受け止めが一般的だ。

80兆円投資めぐる思惑

日本発の大型買収・出資案件が相次ぐ中、日米が関税交渉で合意した5500億ドル(約80兆円)の対米投資に対する思惑もくすぶっている。

ドル/円は1兆円の取引増で、おおむね1円前後の値動きが発生するとされる。仮に「半分の40兆円でも(取引が行われれば)、ドルを40円押し上げるような効果があってもおかしくない」(ふくおかフィナンシャルグループのチーフストラテジスト、佐々木融氏)と、強烈なインパクトを持ち得るためだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米特使・プーチン氏会談、「まずまず良い」協議だった

ワールド

ドイツ、防空システム「アロー」導入 ロシアの脅威に

ビジネス

NY外為市場=ユーロ、対ドルで約7週間ぶり高値 好

ビジネス

米国株式市場=続伸、指標受け利下げ観測継続 マイク
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 2
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 3
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 6
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    トランプ王国テネシーに異変!? 下院補選で共和党が…
  • 10
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中