ANAがトヨタの「カイゼン」を導入...他社が失敗するなか、非製造業なのに成果を出せた理由
カイゼンの成果は社員に還元する
社員たちがカイゼンを「楽しいもの」「取り組みたいもの」と思うためには、「カイゼンをすると自分の仕事が楽になる」という事実が重要です。そこで私たちは、カイゼンによって得られた成果を本人にすべて還元することを約束しました。
つまり、カイゼンを「自分が楽になる」ことだけに使ってもらうことにしたのです。
「時間があれば、あの棚の整理をしたい」とか、「デスク裏の配線がぐちゃぐちゃになっているからきれいにしたい」といった、緊急ではないために先延ばしにされているタスクはよくあります。カイゼンによって業務時間を短縮することができたら、空いた時間でそれらに取り組むことができます。
また、「もっとスキルアップするために研修を受けたい」「資格取得のためにスクールに通いたい」「業務外のことだけど、勉強しておきたい」というように、自分の価値を高めるための自己投資にも時間を使ってもらいます。
これらも、忙しいとどうしても優先度が下がってしまうため、つい先延ばしになってしまいやすいことです。
でも、長期的に見れば、社員の自己投資は本人だけでなく会社にとっても非常に大きなリターンをもたらすものですから、できるだけ取り組んでもらったほうが良いに決まっています。
ところが、カイゼンの導入に失敗している会社は、カイゼンによって社員が生み出した時間を会社のものとして考えがちです。そして「時間が浮いたならこの仕事もやってほしい」「カイゼンによって作業効率が上がり、部署の人員が余るようになったから社員を別の部署に異動させる」といった行き過ぎた対応を取ってしまうのです。