最新記事
中国

ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「一帯一路」の真実

2025年1月29日(水)19時45分
梶谷 懐(神戸大学大学院経済学研究科教授)、高口康太(ジャーナリスト、千葉大学客員教授)
習近平 プーチン

プーチンの始めたウクライナ戦争も、中国「一帯一路」の変化に影響を及ぼした(2024年10月) AXIM SHIPENKOV/Pool via REUTERS

<「一帯一路」は実は外交的野心ではなく、中国国内の「供給サイドの改革」とほぼ同時期に打ち出された経済政策だった。ではなぜ、長く続かなかったのか>

*本稿は、『幸福な監視国家・中国』で知られる気鋭の経済学者とジャーナリストが、世界を翻弄する中国の「宿痾」を解き明かした新刊『ピークアウトする中国――「殺到する経済」と「合理的バブル」の限界』(文春新書)より、一部を抜粋、加筆・編集したものです。

◇ ◇ ◇

中国の一帯一路政策は有名だ。アジアとヨーロッパを陸路と海上航路でつなぐルートを作り、貿易を活発化させて経済成長を目指すという構想だが、国際的地位と軍事的プレゼンスの向上という中国の野心のあらわれとして解釈されることも多い。だが実際には、当初から生産能力過剰を抱える中国国内の経済対策という側面が強かった。

中国は強大すぎるインフラ建設能力を持つ。空港や港、高速道路、そして不動産と中国国内に作りまくってきた。それが必要だった間はいいのだが、もう十分だ、これ以上作っても無駄になるだけとなると困ったことになる。

海外への輸出は一つの解決策だが、急拡大させれば貿易摩擦につながる。そこで貿易摩擦を生み出さない海外での需要創出策として考案されたのが、「一帯一路」に代表される積極的な対外援助であった。

途上国を使った過剰生産の解消手段

中国政府は、経済が「新常態(ニューノーマル)」と呼ばれる安定的な成長段階に入ったと主張するようになった。その対応として、市場メカニズムを重視した改革の継続、投資に過度に依存した成長路線からの転換、いわゆる「供給サイドの改革」がさかんに説かれるようになった。

中国国内では消費しきれない過剰な生産物は海外に輸出する必要がある。だが、先進国に輸出すると貿易摩擦が起きる。新興国、途上国向けならば問題はないが、彼らには金がない。そこで中国が融資して、その資金で中国のインフラ建設プロジェクトを行うという方策が編み出された。これが「一帯一路」だ。「供給サイドの改革」と「一帯一路」がほぼ同時期に打ち出されたのは偶然ではない。

投資
「FXで長期投資」という投資の新たな選択肢 トライオートFX「世界通貨セレクト」とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

マイクロソフト7─9月売上高、クラウド好調で予想超

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、FRB議長発言で12月利下

ビジネス

米メタ、第3四半期に160億ドルの一時費用計上 大

ビジネス

アルファベット、四半期売上高が予想上回る 広告・ク
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    コレがなければ「進次郎が首相」?...高市早苗を総理に押し上げた「2つの要因」、流れを変えたカーク「参政党演説」
  • 3
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 6
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 7
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 8
    リチウムイオンバッテリー火災で国家クラウドが炎上─…
  • 9
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 10
    怒れるトランプが息の根を止めようとしている、プー…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 9
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 10
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中