最新記事
BOOKS

「本を出したい」人必見...出版社への企画の持ち込みを成功させるコツ【出版業界】

2024年9月27日(金)17時55分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

出版社には得意ジャンルがある

まずひとつめです。これは、私もファッション誌で仕事をしていたときはまったく知らなかったのですが、出版社には、それぞれ得意ジャンルの書籍があります。

たとえば、ビジネス書が得意な出版社、暮らしや健康などの実用書が得意な出版社、学習参考書が得意な出版社、タレント本などのエンタメ系が得意な出版社......など。そもそも書籍は扱っていない出版社もあります。

過去に二度、一社は100年、もう一社は50年の歴史を持つ老舗出版社で「その出版社初のビジネス書」を担当する経験がありました。どうしてそういうことになったかというと、どちらも雑誌の編集長さんと「この美容師さんの美容本ではなくビジネス書を出したい」と盛り上がったからです。

ファンの多い2人の書籍は、どちらも発売後数日で重版したのですが、普段そのジャンルを扱わない出版社でつくることの難しさを感じる機会にもなりました。

まず、その出版社にビジネス書の営業さんがいません。ビジネス書の読者に届くPR方法もノウハウがありません。もちろん、それがわかっていてチャレンジしたのですが、畑違いのジャンルに飛び込むのはやはり難しいものだと感じました。編集長肝入りの企画ですら難しいのですから、持ち込み企画であればなおさらです。

まず、あなたが持ち込みたい企画のジャンルが得意な出版社をリストアップしましょう。

単行本向きの企画、新書向きの企画

似たパターンで「さとゆみさん、これ、新書向きのテーマですよ。うち、新書のレーベルがないので無理です」と言われたこともあります。

一般的に、新書は一般書に比べて、時事的な課題や専門的な課題をわかりやすく入門書として提示するジャンルだと言われています。

面白いのが、一般書がビジネス書、実用書、自己啓発本、教養書......などと分けられるのに対して、新書は扱っている内容がビジネスでも教養でも実用でも、「新書は新書」です。書店でも一般書とは違う棚に並べられることがほとんどなので、新書のレーベルを持っていない出版社から新書は出ません。

このあたりの肌感覚は、私は編集者ほどはわかりません。しかし、その方のアドバイス通り、新書を扱っている出版社に持ち込んだところ、すんなりと企画会議を通りました。

売り込み先を変えると企画が通ることがある

「企画が悪いから通らない」ケースはもちろんあります。けれども「企画は良いけれど、売り込み先を間違っている」ことで、企画が通らないこともあります。

私は、断られたときはなるべく「どこを修正すれば出版の可能性があると思われますか?」と聞くようにしています。そして、「もし、ブラッシュアップして持ち込むとしたら、どこの出版社さんがいいと思いますか?」とも聞きます。

もちろん後者の質問は厚かましすぎるので、編集者さんとの関係で言えそうなときしか言いませんが、たいていみなさん親切に教えてくださいます。そこは、編集者さんのほうが圧倒的に相場観があるので、とてもありがたいアドバイスになります。

たった一人の編集者を口説けばいい

同じ編集部内ですら、打診する編集者さんによって、企画が通ったり通らなかったりすることもあります。

ある出版社の編集者さんに企画を持ち込みました。その人には「うーん、今、僕がいる部署ではこのタイプの書籍は出さないと思うんだよね」と言われました。お礼を言ってその場を立ち去った数日後、その方が所属する編集部の別の編集者さんと会う機会がありました。

「さとゆみさん、この間、うちの編集部に来てたんだって?」と言われたので、私は企画を持ち込んで断られたことをお話ししました。するとその編集者さんに、どんな企画? と聞かれたので内容を説明したら、「興味あるなあ。一度、著者さんと一緒に打ち合わせをしてみたい」と言われ、トントン拍子で出版が決まりました。

その書籍はその後、5刷まで重版しています。「この企画はうちでは難しい」と言った編集者さんと、「うちからこの本を出しましょう」と言った編集者さんは同じ編集部でデスクを並べて働く仲です。

何が言いたいかというと、企画が通るかどうかは、それくらい持ち込んだ編集者さんとの相性によるということです。読者ファーストが大前提とは言え、最初に口説かなくてはならないのは、たった一人の編集者です。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請1.8万件増の24.1万件、予想

ビジネス

米財務長官、FRBに利下げ求める

ビジネス

アングル:日銀、柔軟な政策対応の局面 米関税の不確

ビジネス

米人員削減、4月は前月比62%減 新規採用は低迷=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中