最新記事
労働環境

「生産性アルゴリズム」とは?...アマゾンの物流倉庫労働者の安全に懸念

2024年7月11日(木)19時06分

倉庫ブーム

米連邦準備制度理事会(FRB)のデータによると、電子商取引と配送の爆発的な増加に後押しされ、物流倉庫セクターの雇用者数は過去10年間で約3倍の200万人近くに達した。

しかし、負傷率は平均的な職場の2倍以上だ。


 

米労働安全衛生局(OSHA)の元高官、ジョーダン・バラブ氏は、監視技術と分析の進歩により、企業は労働者を安全性の面でぎりぎりの状態まで追い込む手段を得たと指摘。「生産性アルゴリズムを使えば、安全性の低下を招いてでも労働者をより速く働かせるための、最新鋭の手法を洗い出せる」と語る。

カリフォルニア州の物流倉庫で働くナネッテ・プラセンシアさんは、職場に「一時停止ボタンはない」とし、「痛みがひどくてペースを落としたとしても、最終的には自分の責任になる」と話した。

アマゾンは、負傷率を下げる取り組みを前進させていると説明する。また広報のリンチボーゲル氏は、考課が従業員のコントロールの及ばない要因の影響を受けないよう、全従業員を平等に評価できるようにする仕組みになっていると強調した。

アマゾンに照準

労働団体と職場安全擁護団体は、国内最大級の施設をほぼ全て運営するアマゾンに照準を定めている。

非営利団体「ナショナル・エンプロイメント・ロー・プロジェクト(NELP)」の研究者アイリーン・トゥン氏は5月に共著で発表した報告書で、アマゾンは労働者1000人以上の米大型物流倉庫における雇用の79%を占めているが、負傷に占める比率は86%だと指摘した。

アマゾンは、NELPは「データを誤って解釈している、もしくは間違った筋書きに合わせるために重要な文脈を意図的に省いている」とする声明を出した。 

OSHAは昨年、全米のアマゾン物流倉庫の安全違反に対して15万ドルの罰金を課したが、アマゾンは異議を唱えている。

同社が公表している独自のデータによると、負傷率は毎年着実に改善している。

またアマゾンは、人間工学に基づいて設計されたワークステーションからロボットによる支援まで、労働者の負担を軽減するための技術導入例をブログで列挙している。

商工会議所のフリードマン氏は、WWPAのような法律は結局、消費者のコストを高めると主張。「新たなコストが発生し、そのコストは全ての人に転嫁される可能性がある」と語った。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 台湾有事 そのとき世界は、日本は
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年8月26日号(8月19日発売)は「台湾有事 そのとき世界は、日本は」特集。中国の圧力とアメリカの「変心」に強まる台湾の危機感。東アジア最大のリスクを考える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ヤゲオ、芝浦電子へのTOB価格を7130円に再引き

ワールド

北朝鮮、韓国が軍事境界線付近で警告射撃を行ったと批

ワールド

インテル、米政府による10%株式取得に合意=トラン

ワールド

焦点:中国、社会保険料の回避が違法に 雇用と中小企
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「このクマ、絶対爆笑してる」水槽の前に立つ女の子、ホッキョクグマが取った「まさかの行動」にSNS大爆笑
  • 3
    3本足の「親友」を優しく見守る姿が泣ける!ラブラドール2匹の深い絆
  • 4
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 7
    一体なぜ? 66年前に死んだ「兄の遺体」が南極大陸で…
  • 8
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 9
    海上ヴィラで撮影中、スマホが夜の海に落下...女性が…
  • 10
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 7
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 8
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 9
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 10
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中