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一期一会を演出する「奇跡」の人気店は数年で潰れる...サイゼ元社長が語る「おいしさ」よりも大切なこと

2024年7月3日(水)17時12分
堀埜 一成(サイゼリヤ元社長)*PRESIDENT Onlineからの転載

トイレにだけはこだわった

ただし、トイレだけはお金をかけることにしました。食事をする場所でトイレのにおいがするのは許せないと考えたからです。


詳しく調べていくと、男性用のトイレのにおいが強いこと、さらにいえば、小便の撥はねが原因のひとつであることが判明しました。どうすれば撥ね問題を解決できるかを検討する中で、パナソニックの「アラウーノ」というトイレを選定しました。

アラウーノの特徴は、便器の水の上に泡の層が形成されることです。洗浄液の中に洗剤が入っているからです。洗剤入りの水で流すことにより便器がきれいになり、また水面が泡で覆われます。その泡に、小便の撥ねを抑える効果があるのです。

それによって男性用トイレの撥ねは大幅に減少し、においの発生の抑制に成功しました。このことはトイレ掃除の負荷も減らしたため、従業員にも好評でした。

当たり前品質がサイゼリヤの軸だと打ち出したことは、経営的には大きなメッセージでした。サイゼリヤは「奇跡の会社」であると申しあげましたが、一期一会のサプライズを演出することで「奇跡の会社」になったわけではありません。

むしろ、その場かぎりの「奇跡」を狙わず、どれだけ人が入れ替わっても、いつでもどの店でも同じレベルのサービスを提供できる。そこにこそ、「奇跡の秘密」が隠されているといっても過言ではないのです。

パスタを「おしゃれな巻き方」で出さないワケ

パスタの盛りつけで、イタリアンの個人店でよく見られるように、クルクルッと巻いて出す人がたまにいます。でも、サイゼリヤではそれはよしとされません。

その人だけ上手にできても、別の店ではできないからです。そういう意味での突出した個性というのは、そもそも求められていません。

突出したサービスというのは、プラスになるどころか、トータルではマイナスになる。

必ず「あの店ではこうやってくれたのに、この店ではやってくれない」という不満につながるからです。多店舗展開しているチェーン店では、「当たり前のことを当たり前にできる」ように、ベースラインをそろえることのほうが、はるかに重要です。

味のレベルもそうです。ひとつの店でしか出せないような際立った特徴はかえってマイナスになってしまう。そこで、味のピークをあえて落として、幅を広げる工夫が必要になります。

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