最新記事
対中ビジネス

経済が下向きな上、政府は理不尽──外国人投資家が歴史的ペースで中国から逃げ出した

China's Economic Gloom Scares Away Foreign Investors, Data Shows

2024年2月28日(水)17時17分
マイカ・マッカートニー

香港の不動産バブルは崩壊、残ったのは債務だけ(2月27日) REUTERS/Tyrone Siu

<今の中国は好景気に湧きアメリカに迫る成長を謳歌していた頃とは別の国、経済的妙味もない>

ほんの数年前まで外国投資のメッカだった中国は、経済が勢いを失うのに伴い、外国人投資家の誘致に苦労するようになっている。

中国国家外為管理局(SAFE)が2024年2月に発表したデータによれば、外国企業からの資金流入を示す指標である対中直接投資額は2023年、過去30年で最低となる330億ドルを記録した。

 

中国は、デフレ圧力や不動産市場危機、若者の失業、製造セクターの停滞などに喘いできた。アメリカとの差も広がっている。近い将来、再びアメリカを追い越す勢いを取り戻すことができるのか、怪しくなりつつある。

駐中国のニコラス・バーンズ米国大使は、適用範囲が広い中国の「反スパイ法」が外国投資をいっそう尻込みさせていると言う、」

「中国では、日米欧と韓国から流入する資金よりも、流出する資金のほうが多くなっている。ここ40年間で初めてのことだ」。バーンズは、2月25日に放送されたCBSニュースのインタビューのなかでそう話した。

バーンズによれば、中国政府は世界に対して矛盾するメッセージを発しているという。「一方では、『わが国はビジネスに対して開かれている。米国企業や日本企業を求めている』と言っている。しかし他方では、2023年3月以降、6、7社の米国企業に対して家宅捜索を行なっている」

バーンズは、さらにこう続けた。「(中国政府は、)米国企業に土足で踏み込み、閉鎖し、きわめて不当な言いがかりをつけてくる」

デューディリはスパイ行為?

バーンズが言及しているのは、2023年の反スパイ法改正後に実施された家宅捜索だ。標的になったのは、経営コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーの上海事務所、デューデリジェンス調査会社ミンツ・グループの北京事務所などだ。ミンツ・グループでは、中国人従業員5人が拘束された。

2023年8月には、中国の改正反スパイ法に関して米国務省が懸念を表明し、「スパイ活動と見なされる活動の範囲が大幅に広がり」、恣意的な逮捕のリスクが高まったと述べた。

デューディリジェンスとは、投資対象の企業や人間を調べてリスクを評価する業務だ。中国がとくにデューデリジェンス調査会社を標的にした理由について、バーンズは次のように答えた。「中国政府は、中国国民や中国企業に関するデータを独占したいと考えている。だから、その領域の事業に携わる米国企業は気に入らないのではないか」

外国企業に中国への投資をためらわせている別の要因として、バーンズは知的財産権の窃盗も挙げた。

オーストラリア安全保障情報機構(ASIO)のマイク・バージェス長官も2023年10月、中国政府は「史上もっとも継続的で大規模、かつ手の込んだ知的財産と専門知識の窃盗をおこなっている」と述べている。

(翻訳:ガリレオ)


ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米農務省、5カ月で職員2割が離職 トランプ政権の人

ビジネス

米ウーバーとリフト、中国百度と自動運転タクシー試験

ワールド

米政府、ブラウン大学の安全対策再検討へ 銃乱射事件

ビジネス

元の対ドル基準値、1年3カ月ぶり高水準に 元高警戒
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中