最新記事
日本企業

サブカルの発信地「ヴィレヴァン」、気付いたらマズいことに ドンキに差を付けられた根本理由とは?

2024年2月20日(火)14時01分
谷頭和希(チェーンストア研究家・ライター) *東洋経済オンラインからの転載

ヴィレヴァンとドンキの明暗を分けたもの

以上、ヴィレヴァンの空間戦略が低調である理由を2つのポイントから考えてきた。この2つのうち、1つ目はもはや時代の流れであるから仕方のない面があるものの、2つ目については、他の企業を分析する際にも有用な視点を、私たちに提供してくれる。

ヴィレヴァンと空間的に類似しているのが、驚安の殿堂として知られる「ドン・キホーテ」だ。ドンキもまた、複雑な通路をもち、雑多な商品を多数販売している。また、宣伝POPも工夫されていて、ヴィレヴァンらしさを感じさせる。しかし、ヴィレヴァンが低調なのに対し、ドンキは非常に好調で、創業以来増収を続けている。

空間という視点でみれば、似通った世界観をもつ両社だが、なぜその差は開いてしまったのか。

端的に言って、それは、ドンキがある段階で、この「押し付けがましさ」から脱却したからだと思う。

ドン・キホーテの店舗入口

国内616店、海外103店(2023年9月末時点)を構えるドンキ。今もなお、積極的な出店を進めている(撮影:尾形文繁)

意外と知られていないことだが、ドンキは、2008年以降、「MEGAドンキ」というGMS業態の開発を進め、ちまたのドンキには、いわゆる一般的なスーパーのような店舗が増えてきた。ドンキ特有のごちゃついた空間はなく、スーパーのように区画がはっきりとわかるのが特徴だ。

そして、それらの店舗は、地域住民から普通のスーパーとして使われ、GMSの分野で業績を上げてきた。

また、立地によってZ世代向けの「キラキラドンキ」や、家飲み専用の「酒ドンキ」など、その立地場所に応じた業態の開発を多く進めてきた。いわば、ドンキは「世界観」を柔軟に変化させ、企業側の意図を強くは押し出してこなかったのだ。

ブックオフもまた、「押し付けがましさ」から離れている

ブックオフの看板

比較対象として挙げられていたブックオフ(写真:著者撮影)

今回の「ヴィレヴァンやばいんじゃない?」問題について、SNSの投稿で若干見受けられたのが「ブックオフとヴィレヴァンみたいに、平成を支えてきたカルチャー企業の衰退が目に見えてきたな」というものである。

<br />
『ブックオフから考える: 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)しかし、こうした意見は、実情を反映できていない。というのも、まさに、ブックオフはある種の「押し付けがましさ」をもたず、柔軟にその業態や扱う商品を変えてしぶとく生き残っているからである。

むしろ、「押し付けがましさ」の問題から見れば、両社は対極にある。

ブックオフは、2016年以降、古本以外の商材に力を入れ始めている。トレーディングカードや洋服などがその代表だ。

最近のブックオフの店舗に行くと、「ここ、トレカ屋?」と思うぐらいには、トレーディングカードの扱いが増えている。ブックオフが好調なのは数値的にも明らかで、2023年5月期には過去最高益である27億円を叩き出している。その大きな要因がトレカの取り扱いである。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルがイランに新たな攻撃、「米と交渉せず」と

ワールド

米戦闘機が墜落、クウェートが誤射 ドローン攻撃続く

ビジネス

英住宅ローン承認件数、1月は2年ぶり低水準 予想外

ワールド

IAEA、核施設に「被害の兆候なし」 ナタンツ攻撃
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医師が語る心優先の健康法
  • 4
    ドバイの空港・ホテルに被害 イランが湾岸諸国に報…
  • 5
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作…
  • 6
    「本当にテイラー?」「メイクの力が大きい...」テイ…
  • 7
    「高市大勝」に中国人が見せた意外な反応
  • 8
    【銘柄】「三菱重工業」の株価上昇はどこまで続く...…
  • 9
    【銘柄】「ファナック」は新時代の主役か...フィジカ…
  • 10
    米・イスラエルの「イラン攻撃」受け、航空各社が中…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 4
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 7
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 8
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 9
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 10
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中