最新記事
M&A

USスチール買収合戦の内幕判明、日鉄に敗れたCクリフスの動き

2024年1月25日(木)10時19分
ロイター
USスチールの施設

1月24日、日本製鉄による買収に合意している米USスチールが公表した資料で、日鉄に競り負けたクリーブランド・クリフス側の動きや、USスチール経営陣の最終決定に至る経緯の詳細が判明した。写真はUSスチールの施設。インディアナ州ゲーリーで2018年撮影(2024年 ロイター/Rajesh Singh)

日本製鉄による買収に合意している米USスチールが24日公表した資料で、日鉄に競り負けたクリーブランド・クリフス側の動きや、USスチール経営陣の最終決定に至る経緯の詳細が判明した。

USスチールが明らかにしたのは、買収入札プロセスの記録。ここで「D社」が現金と株式の組み合わせ方式に基づく1株当たりの買収提示額を54ドルに引き上げるとともに、シナジー効果でUSスチール株主に対してさらに1株当たり6.50ドルの追加利益をもたらすことができるとアピールしていた。

 

事情に詳しい関係者によると、このD社はクリーブランド・クリフスを指す。日鉄は2023年12月18日に、全額現金方式による141億ドル、1株当たり55ドルでのUSスチール買収を発表したが、クリーブランド・クリフスは自分たちの提案の方が実質的な金額は高くなると主張したという。

一方USスチール側が、クリーブランド・クリフスとの統合について独占禁止当局に却下されるのではないかと懸念していたことも分かった。その理由は、両社を合計した米自動車業界向けの鉄鋼製品供給量の多さや、一つの企業が米国の鉄鉱石生産の最大95%を抑えてしまう事態になることだ。

クリーブランド・クリフスはそうしたリスクへの対応として、当局から買収を承認されなかった場合に支払う違約金を設定したほか、最大で売上高20億ドル相当の資産を手放すと約束。しかしこれは、USスチールのアドバイザーが勧告していた70億ドル相当の資産売却を大きく下回るものだった。

またUSスチールの取締役会は、そうした資産売却の可能性自体が統合後の新会社の価値を損ねかねないし、買収資金の半分を株式発行で賄うクリーブランド・クリフスの計画に関しても、株主の承認をクリアしなければならないという点で不安を感じていたようだ。

日鉄の買収は全額現金なので、株主投票による承認は必要とされない。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 世界も「老害」戦争
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月25日号(11月18日発売)は「世界も『老害』戦争」特集。アメリカやヨーロッパでも若者が高齢者の「犠牲」に

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


東京アメリカンクラブ
一夜だけ、会員制クラブの扉が開いた──東京アメリカンクラブ「バンケットショーケース」で出会う、理想のパーティー
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ビットコイン一時9万ドル割れ、リスク志向後退 機関

ビジネス

ユーロ圏銀行、資金調達の市場依存が危機時にリスク=

ビジネス

欧州の銀行、前例のないリスクに備えを ECB警告

ビジネス

ブラジル、仮想通貨の国際決済に課税検討=関係筋
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 3
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 10
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中