最新記事
ストレス

読書で「自己肯定感」が高まる...ストレス軽減の「癒し効果」、長生きにもつながる読書の効能とは?

2023年10月28日(土)18時26分
flier編集部

「人間的なやりとり」を取り戻したい

──本書を発刊されたときから、読書について新たな動きはありますか?

本によって癒やされた経験が「読書セラピー」の一種だという認識が広がっていったように思います。特に「読書で癒やされた経験を共有する場が大切だと気づけた」という声も寄せられました。

本の内容理解や勉強を目的として、学びを共有する機会はよくあります。それに対し、本を通じて自身を癒やし、その思いをわかち合う場があってもいいんだ、というのが、多くの方にとって発見だったそうです。自分にとって切実なテーマであればあるほど、他者に気軽に共有できないもの。ですが、本を媒介にすれば、自分の思いを話しやすいという声もあります。

最近の読書全般の動きとして、社内で図書館をつくる動きや、個人の蔵書を持ち寄って「まちライブラリー(図書館)」をつくる動きが広がっています。後者は、個々人の独自の書棚ができ、本をきっかけに対話やお茶会が生まれています。

こうした動きが活発になっている背景に何があるのか。世の中で資本主義化が進み、効率化の波にのまれて、どこか心が渇いていく部分があるのではと思います。人間的なやりとりが失われていることへの反動というのでしょうか。本を媒介にして、深いつながりを取り戻したいという思いがあるのだと思います。

倍速視聴は、「感情を揺り動かされたくない」から

──いまはタイパ(タイムパフォーマンス)の時代といわれ、効率化が重視されています。ビジネスパーソンの読書にも何か影響があるのでしょうか。

実は、以前は映画や読書などでタイパを追求することに疑問を抱いていました。映画を倍速で視聴したら、登場人物の心の機微をつかめなないし、作品をちゃんと味わえないのではないかと。ですが、『映画を早送りで観る人たち』を読んで、驚く発見がありました。

倍速視聴や10秒飛ばしをするのは、単に効率化を求めているだけではない。映画1本1本に感情を揺り動かされて、疲れるのを避けたいというのです。これは映画だけでなく本など他のコンテンツも同じ。「ちゃんと味わわない」ことで、感情の消費量を節約している。「大量のコンテンツを消化しないといけない」というプレッシャーに、それほどまでに追い込まれ、疲れてしまっている姿が浮かび上がってきました。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減

ビジネス

米KKRの1─3月期、20%増益 手数料収入が堅調

ビジネス

米フォード、4月の米国販売は16%増 EVは急減

ワールド

米イラン核協議、3日予定の4回目会合延期 「米次第
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中