最新記事

ビジネス

ジミヘン、カート・コバーン、エイミー・ワインハウス...天才は「27歳で死ぬ」が条件?

2022年10月6日(木)18時09分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
カート・コバーン

コバーンの死後、ニルヴァーナのメンバーとボーカルに迎えたジョーン・ジェットによるライブ(2014年4月) Lucas Jackson-Reuters

<天才ではない私たちが創造性を発揮するにはどうすればよいのか? 上から目線の自己啓発書とは一味違うアイデアを生み出す「ヒント」>

エッセイ『女ふたり、暮らしています。』が評判となった韓国の作家、キム・ハナ。その彼女が、コピーライターとして培った発想力やアイデアの原点について記した本『アイデアがあふれ出す不思議な12の対話』が先日、日本でも翻訳出版された。一方的に「ああしなさい」「こうしなさい」と押し付ける自己啓発書でも、単純な法則やハウツーでもなく、真夜中のバーで語り合う男女の対話形式で記した発想力を養う「アイデアの本質」が詰まった1冊だ。

ここでは、決して天才ではないわれわれが、創造性を発揮してアイデアを生むためのヒントとなる部分を『アイデアがあふれ出す不思議な12の対話』から全3回にわたって抜粋して紹介する。今回は、その第2回。
第1回:「天才に学ぶ」類のアイデア本が、凡人には役立たない理由
第3回:アイデアが次々と沸く会議と、空気が固まる会議の違いとはなにか

◇ ◇ ◇


病や狂気に宿る天才性というロマンチックさ

『ロード・オブ・ザ・リング』(二〇〇一)のピーター・ジャクソン監督が昔作ったカルト映画『乙女の祈り』(一九九四)で、十代の少女役を演じたケイト・ウィンスレットがこんなセリフを吐きます。「立派な人はみんな、骨や肺を患っている。ぞっとするほどロマンチックなんだから」。病や狂気に宿る天才性というのは、多分にロマンチックなものです。大衆はそれを絶えず神話化し、消費するのに飽きることはありません。

早世はロマンチックな天才神話の最たるものです。「27クラブ」をご存じですか。二十七歳で死んだ欧米のミュージシャンたちのクラブです。ジミ・ヘンドリックス(一九四二~一九七〇)、ジャニス・ジョプリン(一九四三~一九七〇)、ジム・モリソン(一九四三~一九七一)、カート・コバーン(一九六七~一九九四)に続き、少し前にエイミー・ワインハウス(一九八三~二〇一一)がそこに仲間入りしました。美しさは危うさからもたらされるもので、うつ病や薬物中毒は彼らの音楽にある種の影響を及ぼし、独特の美しさを作り上げたりもしますが、結局は命まで奪っていきました。カート・コバーンは遺書にこんなことを書き残しました。「だんだん消えていくよりは、一瞬にして燃え尽きた方がいい(It's better to burn out than to fade away.)」

彼らの死は、27という数字と共に悲劇的な神話性を帯びることになりました。そうして「天才は二十七歳で死ぬ」という神話はさらに強調されていくのです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

オランダ政府、ネクスペリアへの管理措置を停止 対中

ワールド

ウクライナに大規模夜間攻撃、19人死亡・66人負傷

ワールド

ウクライナに大規模夜間攻撃、19人死亡・66人負傷

ワールド

中国、日本産水産物を事実上輸入停止か 高市首相発言
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、完成した「信じられない」大失敗ヘアにSNS爆笑
  • 4
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 7
    衛星画像が捉えた中国の「侵攻部隊」
  • 8
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 9
    ホワイトカラー志望への偏りが人手不足をより深刻化…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中