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タダ同然の魚からお金を生み出す...... 24歳シングルマザー社長が日本の漁業に奇跡を起こした

2022年10月8日(土)11時00分
坪内知佳(GHIBLI代表) *PRESIDENT Onlineからの転載

萩大島の漁港

萩大島船団丸には島の漁業の未来がかかっている 写真=畑谷友幸

萩の漁業の特長を生かしつつ、現状の問題点をクリアできる最適解だと思った。その「萩大島船団丸」の6次産業化事業プランはこうだ。


1.萩大島で獲れた魚のうち、主力商品のアジとサバは従来と同じように漁協の管理する市場に出荷する。
2.それ以外のイサキやスズキなどの混獲魚(こんかくぎょ)を、「粋粋(いきいき)ボックス」という商品名で箱詰めして、注文した消費者に直接販売する。
3.粋粋ボックスで販売する混獲魚は、船の上で新鮮なうちに消費者の希望に応じて処理をする。
4.「船団丸ブランド」で販売する魚は市場に水揚げする魚とは区別し、徹底した品質管理や手当てを施す。
5.粋粋ボックスに詰めて直接販売する一部のアジやサバについても、市場に卸すものとは分けて温度などを管理することで商品価値を高め、ブランド力を付ける。

これが実現すれば、アジやサバについては今までと同じ収益を上げながら、これまでは市場に水揚げしても1箱1000円程度しか値段がつかなかったような混獲魚を、消費者の希望どおり処理することで、倍以上の価格で売ることができるはずだ。

つまり箱単位で投げ売りしていた混獲魚を1匹ずつ丁寧に扱うことで、少量でも大きな収益を得ることが可能になる、というわけだ。

萩大島船団丸、出航す

「ファーストペンギン」書き上げた事業計画書を長岡たちも喜んでくれた。

「わしらだけでは到底こんな立派なものは作れんかった」
「あんたに頼んで正解やった。本当によかった」

彼らの言葉に自信を得た私はさっそく、計画書を農林水産省に提出した。2011年3月のことだ。

その後、細かい書類の作り直しや、何度かの審査を経て、1年2カ月後にわれわれ萩大島船団丸の6次産業化事業計画は無事に国の認定事業者に選ばれたのである。しかも、山口地域農政局から申請した多くの事業者のなかで、水産分野の認定事業者第1号として。2012年5月26日のことだった。

こうして、偶然の出会いから、私たちは日本の漁業の常識を根底から覆す挑戦へと漕ぎ出したのだった。

坪内知佳

GHIBLI代表
1986年、福井県生まれ。GHIBLI代表として「船団丸」ブランドを展開する。名古屋外国語大学を中退後、山口県萩市に移住。翻訳事務所を立ち上げ、同時に企業を対象にしたコンサルティング業務を開始。2010年に任意会社「萩大島船団丸」代表に就任。農林水産省から6次産業化の認定を受け、漁獲した魚を直接消費者に届ける自家出荷をスタート。漁業関係者の注目を集める。2014年に「萩大島船団丸」を株式会社化しGHIBLIを立ち上げ。翌年から事業の全国展開を開始し、各地に「船団丸」ブランドが拡大している。


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
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