最新記事

未来をつくるSDGs

「今や米欧中で理念をめぐって争う時代、だからSDGsが必要不可欠になった」

A New Age of Ideals

2022年3月4日(金)16時20分
朴順梨(ライター)

mookSDGs20220304invu-4.jpg

Tomohisa Tobitsuka for Newsweek Japan

――SNSにより企業が個人の声を無視できなくなった。

かつての企業は個人を無視していたというより、声を聞く方法がなかったのです。SNSには誰もが本音を書くので、何が求められているかがすぐに分かります。

――SDGsについて聞きたい。17の目標は「このとおりになったらいいよね」という理想に満ちているが、現実は追い付いていない。

本でも「SDGsの目標は校長先生の挨拶のようだ」と書きましたが、確かに日本ではきれいごととして捉えられています。

日本人は失われた30年の間に理想が現実化した経験がないので、理念や大義名分に対する反発が強くなっているからです。

しかし世界は今や、アメリカ型理念とEU型理念と中国型理念などをめぐる争いになりました。日本でも2035年から新車はEV(電気自動車)のみの販売になる方針ですが、EVシフトは環境保護を理念にするEUがリードしたがっています。

もはや理念をめぐる争いに勝たないとビジネスで負ける時代になった。これからは市場のシェアだけでなく、理念のシェアについて考える必要があります。

そう考えると、SDGsは理想主義でもきれいごとでもなく、まさにビジネスの現場と言えるでしょう。

mookSDGs20220304invu-5.jpg

Tomohisa Tobitsuka for Newsweek Japan

――それでもSDGsが腹落ちしない人もいる。

お茶の間がなくなってテレビは一人一人が個別に見るようになりましたし、かつては家計を誰かが握るというステレオタイプがあったが、今は一人一人がお金を握っている。

「ルールが変わった」という説明の仕方をすると、納得してもらえることが多いです。

――SDGsをうたいながらも、売れないからと途中で投げ出す企業もある。消費者ができることは?

応援したい商品を買うとPOSシステムを通して本社に伝わりますし、多くの企業が今ではエゴサーチしているので、SNSでつぶやけば確実に届く。さらに、その商品名で検索するとグーグルトレンドに入り、多くの人の目に触れます。

買う、発信する、調べる。これが大きなパワーとなることで、投資や商品開発が進んでいくでしょう。

mookSDGs20220304invu-6.jpg

Tomohisa Tobitsuka for Newsweek Japan

――最後に、SDGsをテーマに起業したい人に向けてメッセージを。

やりたいことをSNSで発言すれば、必ず人や情報が集まってきます。

私の新しい会社での肩書は「チーフSDGsエディター」ですが、これは自分で作りました。勝手に名乗って勝手に仕事を作っていけば、そこから世界は変わる。

だからまずは、きれいごとや理想をどんどん発信すればいい。仕事を自分で生み出していけるのがSDGs時代の特徴ですから。

SDGsがひらくビジネス新時代
 竹下隆一郎 著
 ちくま新書

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

SDGs2022_mook_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

ニューズウィーク日本版SPECIAL ISSUE「未来をつくるSDGs 2022」が好評発売中。遠隔授業、アパレル循環、エコホテル、昆虫食、週休3日......日本と世界のSDGs事例集。[特別インタビュー]のん(女優)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECBの金融政策修正に慎重姿勢、スロバキア中銀総裁

ビジネス

キンバリークラーク、「タイレノール」メーカーを40

ビジネス

米テスラの欧州販売台数、10月に急減 北欧・スペイ

ビジネス

米国のインフレ高止まり、追加利下げ急がず=シカゴ連
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    【HTV-X】7つのキーワードで知る、日本製新型宇宙ス…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中