最新記事

中国経済

中国企業に押し寄せる習近平の規制強化の嵐 「容赦ない締め付け」に懸念

2021年8月13日(金)17時49分

カリフォルニア大学サンディエゴ校のビクター・シン准教授は、このトップダウン方式の取り締まりは国有企業や関係省庁、専門家らの意見を取り入れる協議の手順をおざなりにしてしまっていると分析。「協議手順自体は残っているものの、スピードがずっと早まっているように感じる」と述べ、その裏返しで利害関係者が大きな驚きに見舞われ、彼らの中期的な利害への配慮がないまま政策が打ち出される恐れがあるとの見方を示した。

ニューヨーク大学法科大学院のウィンストン・マ客員教授は、投資家が油断していたとみている。「一部の外国人投資家は中国の法体系を真剣に取り合ってこなかった。彼らは各種規制がこんなにすぐに出てくるとは想定していなかったし、たとえ出てきても厳しく実行されはしないと考えていた」という。

フィッチ・レーティングスは10日、今後は中国に対し、商業的な利害関係者に確実性と信頼を届けられるよう政策変更の優先順位を付けて説明することが求められ、経済的な混乱を最小限にするよう迫る圧力が強まると指摘した。遠慮会釈なしに政策を実行し、木で鼻をくくったような対話の態度に終始すれば、海外の投資家が中国の証券購入に際して要求する規制リスクのプレミアムは増大しかねないと主張した。

自己修正能力

中国当局も、高圧的な姿勢での政策実行がどんな影響を及ぼすかは認識しているようだ。

営利目的の学習塾禁止が株価下落を引き起こしたことを受け、中国証券監督管理委員会は外国投資銀行の幹部と話し合いの場を設け、不安を和らげようとした。

最近では共産党指導部が、温室効果ガス排出量削減を政治キャンペーン的に進めようとする地方政府の方針について是正する意向を発表している。

杭州を拠点とするウォーター・ウィズダム・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ユアン・ユウェイ氏は、これまでは中国政府が望ましくない結果が出た場合に政策修正に時間がかかっていたのに反して、現在の政策転換が素早いことに驚きを見せる。「3月から排出量削減政策が大きく踏み込んだものになり、これがコモディティー価格高騰の引き金になった。この失敗には迅速に対処がされた。集中的な権力は、自己修正システムがある限りは有効に機能する。だが、自己修正が遅ければ、問題は起きる」と警告した。

(Andrew Galbraith記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・オーストラリアの島を買って住民の立ち入りを禁じた中国企業に怨嗟の声
・反日デモへつながった尖閣沖事件から10年 「特攻漁船」船長の意外すぎる末路



今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米中貿易摩擦再燃で新たな下振れリスク、利下げ急務に

ワールド

トランプ氏、習氏と会談の用意 米財務長官 中国「混

ビジネス

シカゴ連銀発表の米小売売上高、9月は+0.5% 前

ビジネス

米BofAの7─9月期は増益、投資銀行業務好調で予
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 2
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 3
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に共通する特徴、絶対にしない「15の法則」とは?
  • 4
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 5
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 6
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 7
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 7
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中