最新記事

世界経済

コロナ感染再拡大に大洪水、世界のサプライチェーンが崩壊の危機

2021年8月1日(日)08時54分
洪水被害を受けた中国の鄭州市

新型コロナウイルスの感染再拡大、中国とドイツの大洪水に、南アフリカの港湾に対するサイバー攻撃――。写真は洪水被害を受けた鄭州市。23日撮影(2021年 ロイター/Aly Song)

新型コロナウイルスの感染再拡大、中国とドイツの大洪水に、南アフリカの港湾に対するサイバー攻撃――。これらの出来事がまるで謀ったように相次いで発生し、世界のサプライチェーン(供給網)を限界点へと導き、ただでさえ脆弱な原材料、部品、消費財の流れを脅かしつつある。企業やエコノミスト、輸送専門家の間からはこうした声が聞こえてきた。

感染力の強いインド由来のデルタ株はアジア各所で猛威を振るい、多くの国が貨物船の船員の上陸を禁止。これによって疲労した船員の交代ができずに勤務期間の超過者が10万人前後に達するという、昨年ロックダウンが最も厳格に実施された時期をほうふつさせる事態になっている。

国際海運会議所(ICS)のプラッテン事務局長は「われわれはもはや船員交代危機第2波の瀬戸際ではなく、既に渦中にある。これは世界の供給網にとって危険な局面だ」と懸念を吐露した。

世界貿易のおよそ9割を船舶が担っている点からすれば、船員問題は石油、鉄鉱石から食料、電子製品まであらゆるモノの供給に混乱をもたらしていると言える。

ドイツの海運会社ハパックロイドは現状について「極めて厳しい。貨物船の空き容量は非常に少なく、空のコンテナは乏しい。幾つかの港湾やターミナルの稼働状況も本格的に改善していない。われわれはこれが恐らく第4・四半期にかけて続くと想定しているが、先を読むのがとても難しい」と述べた。

一方、中国とドイツの大洪水も、最初のパンデミックからまだ完全に復活していない世界の供給網をさらに動揺させる要因だ。

中国では洪水のせいで、夏の電力需要のピークに対応するために発電所が石炭を必要としているにもかかわらず、内モンゴル自治区や山西省などにある鉱山からの石炭輸送が制約を受けている。

ドイツは陸運が著しく停滞。供給網の動向分析プラットフォーム、フォーカイトによると、11日までの週の輸送遅延量は前週比で15%増加した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドルが対ユーロ・スイスフランで下落、

ワールド

仏もパレスチナ国家承認、英加などに続き

ビジネス

米国株式市場=主要3指数、3日連続最高値更新 エヌ

ビジネス

健全な消費支出、米経済を下支え=リッチモンド連銀総
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 2
    筋肉はマシンでは育たない...器械に頼らぬ者だけがたどり着ける「究極の筋トレ」とは?
  • 3
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分かった驚きの中身
  • 4
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 5
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 6
    「より良い明日」の実現に向けて、スモークレスな世…
  • 7
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 8
    米専門職向け「H-1B」ビザ「手数料1500万円」の新大…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「コメの消費量」が多い国は…
  • 10
    トランプに悪気はない? 英キャサリン妃への振る舞い…
  • 1
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 2
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分かった驚きの中身
  • 3
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 4
    筋肉はマシンでは育たない...器械に頼らぬ者だけがた…
  • 5
    【動画あり】トランプがチャールズ英国王の目の前で…
  • 6
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 7
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 8
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 9
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 10
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 8
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中