最新記事

クリスマス

コロナパンデミックが変えたXマス商戦 臨時採用は接客から倉庫に

2020年12月19日(土)18時43分

小売業の新世界

観光バス会社で働いていて4月に解雇されたアラバマ州のカイラ・フレデリックさん(31)は11月、人生初めての季節労働に携わるようになった。地元の衣料品店の倉庫での仕事だ。オンラインの注文を受け、在庫を取り出し、タグ付けなどの作業にあたる。

「こんなに長く解雇されたままになるとは予想していなかった。この仕事があってありがたい」と話す。

英郵便事業のロイヤル・メールは今年、季節従業員の採用を3万3000人と、昨年の2万人から増やした。米労働統計局のデータからは、米配送大手フェデックスも昨年の5万5000人から7万人に増やしていることが分かる。

グラスドアのシニアエコノミスト、ダニエル・ジャオ氏はこうした動きについて、「小売業にとって新たな世界への扉になりそうだ」と言う。「パンデミック中に必要から生まれた現象が恒常化し、今後はクリスマスシーズンは毎年オンラインで買い物をする慣例になる可能性が高い」とみる。

グラスドアによると、配送用トラックの運転手、倉庫作業員、オンライン受注受け付けスタッフなど電子商取引絡みの求人への応募は、米国で前年比120%、英国で45%、それぞれ急増した。

カリフォルニア南部の大学生、オスカー・ジミネスさん(22)は幸運な1人だ。10月に小売店で季節限定の職を得られた。ただ、店頭で接客するのだと思っていたら、そうではなく、店の裏手の倉庫で働いている。応募時の業務内容とは違うが、「注文を受け、建物内を歩き回り、オンラインで購入された品物を探し、店先受け取りか宅配の準備を整える」忙しい毎日だ。

一部のスーパーマーケットも採用を増やしている。英テスコは季節従業員の採用を昨年より2000人増やした。ロックダウン(封鎖)の動向が不透明だったため、学生向け求人サイトへの掲載は例年より1カ月遅かったが、にもかかわらず、サイトのデータによると応募者は昨年の2倍だ。

一方でドイツのスーパー大手、リドルは今年、昨年より40%多い2400人の見習社員を受け入れた。同社と米アマゾン・ドット・コムは需要の急増に対処するため、今年の初めからスタッフを大幅に増やしてきたため、季節労働者を採用する必要性は薄れている。

アマゾンは9月の時点で、年初からスタッフを既に27万5000人増やしたため、米国での季節従業員の採用は昨年の半分の10万人にとどめたと説明している。

(Victoria Waldersee記者、Melissa Fares記者、Nivedita Balu記者)

ニューズウィーク日本版 日本人と参政党
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年10月21日号(10月15日発売)は「日本人と参政党」特集。怒れる日本が生んだ参政党現象の源泉にルポで迫る。[PLUS]神谷宗弊インタビュー

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル軍がガザで発砲、少なくとも6人死亡

ビジネス

日銀、ETFの売却開始へ信託銀を公募 11月に入札

ワールド

ロシア、元石油王らを刑事捜査 「テロ組織」創設容疑

ビジネス

独ZEW景気期待指数、10月は上昇 市場予想下回る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃をめぐる大論争に発展
  • 4
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 9
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 10
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中