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米大統領選2020 アメリカの一番長い日

著名エコノミスト9人による次期大統領への助言──コロナで深刻な打撃を被った米経済への処方箋は?

RX FOR AN AILING ECONOMY

2020年11月18日(水)18時15分
ピーター・カーボナーラ、スコット・リーブス(本誌記者)

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JUNG GETTY-MOMENT/GETTY IMAGES

学生ローンの債務を一部帳消しにする

■フェナバ・アド(エコノミスト、ウィスコンシン大学マディソン校准教授)

アメリカでは約4400万人が学生ローンを借りており、その負債総額は1兆6000億ドルを超えている。だからウィスコンシン大学のフェナバ・アドは、次期大統領には彼らの救済に本腰を入れてほしいと考える。調べてみると、借入額は少ないのに返済に窮している人が少なからずいる。例えば学位を取得できずに退学し、結果として満足な仕事に就けない人たちだ。

「家族を困らせるわけにはいかないから、みんな借金の返済よりも日々の暮らしに必要な出費を優先せざるを得ない」と、アドは言う。コロナ禍を受けて、連邦政府は学生ローンの返済猶予を今年末まで認めている。返済不能な状況にある債務者には返済プランの見直しに応じるという金融機関もあるが、いずれも一時的な対策にすぎず、問題の抜本的な解決にはつながらない。

だから、とアドは考える。次期大統領には一歩踏み込んで、少なくとも債務の一部を帳消しにする措置を講じてほしい。法的なハードルが高いのなら、かつて民主党の一部議員が提案したように、超法規的な措置として学生1人当たり最大5万ドルの債務を免除する大統領令を出してほしい。それも無理なら、とアドは言う。「せめて新型コロナウイルスに有効なワクチンが広く使えるようになるまで、学生ローンの返済猶予を延長し、家計を支えるための現金給付を続けるべきだ」

最優先事項は雇用の創出インフラ補修をためらうな

■ベス・アン・ボビノ(スタンダード&プアーズ米国担当主任エコノミスト)

今春のピーク時に比べれば、失業率はだいぶ下がってきた。しかしベス・アン・ボビノに言わせると、まだ不十分。昨年の水準には程遠く、このまま雇用の改善が続くとも思えない。「不況の底へまっしぐらではないが、今も失業率は高止まりしていて、景気の回復力も弱い。30〜35%の確率で再び景気後退に陥る可能性がある」とボビノは言う。「次期大統領は、この厳しい現実を見据えて対策を打ち出さなくてはならない」

最優先事項は雇用の創出であり、そのための公的支出をためらわないことだと、ボビノは考える。その場合、雇用創出効果が最も高いのは公共事業であり、国内の老朽化した橋やトンネル、幹線道路、空港などの修理・建て替えを思い切って進めるべきだと訴える。

インフラ関連の事業に「2兆1000億ドルを投資すれば、2024年には230万以上の雇用が生まれる」と、ボビノは言う。1人当たりの年収は2400ドル増え、今後10年間でGDPには5兆7000億ドルが加わる。景気後退による損失額の10倍だ。これは浪費ではない。この国と、そこで働く人々への手堅い投資だ」

<2020年11月17日号「米大統領選2020 アメリカの一番長い日」特集より>

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