最新記事

株価

ダウ史上初の3万ドル突破 投資家からは冷静な声

2020年11月25日(水)10時04分

11月24日のニューヨーク株式市場で、ダウ工業株30種平均が大幅上昇し、史上初めて3万ドルの大台を突破した。ウオール街で6日撮影(2020年 ロイター/Carlo Allegri)

24日のニューヨーク株式市場で、ダウ工業株30種平均が大幅上昇し、史上初めて3万ドルの大台を突破した。新型コロナウイルスのパンデミックで経済が痛手を受け、なお数百万人の失業者が存在する中で、株式市場に心理的な追い風が吹いた形だ。

有望な新型コロナウイルス感染症ワクチンが相次ぎ登場したことや、米政権移行がより円滑に進みそうだとの見通しが、市場心理を上向かせている。ただプロの投資家にとって、3万ドル超えはそれほど重大な意味は持たない。

市場の熱気を共有したいと思いながらもまだ様子を見ている小口投資家にとって、今回の動きは参入を誘うきっかけになる可能性はあるものの、専門家は、ダウが2万ドルに達した2017年1月に比べれば印象度は薄く、話題を集めるニュースの見出しという以上の価値はほとんどないと言い切る。

インベスコのグローバル市場ストラテジスト、ブライアン・レビット氏は顧客に対して、ダウが3万ドルを突破したといってもそれ自体が持つ情報性は乏しい以上、過度にうれしがったり、心配したりするべきでないと助言した。

レビット氏は、ダウが2万ドルを付けた際でさえ、その約18年前の1万ドル突破に比べれば騒ぎ方は小さくなったと指摘。ハイテクバブルの崩壊や金融危機を経て、誰もが素直に祝福できない世界となっており、下手に喜ぶムードが出てこないことは、むしろ株高の持続という面ではこの上なく良い兆候ではないかとの見方を示した。

  普通の人から見れば、ダウ工業株30種平均は米国株を代表する指標としてなじみ深い。しかし大半の投資家にとって、30の大型株だけで構成される指数の重要度はかつてほどでなくなった。

S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスによると、ダウ銘柄の合計時価総額は9兆2000億ドルで、連動して運用されている資金は282億ドルにとどまる。一方、S&P総合500種の時価総額はおよそ32兆ドル、連動資金は4兆6000億ドルに上り、市場全般のバロメーターとしてはこちらの方がはるかに大事だ。

TDアメリトレードのチーフ市場ストラテジスト、JJ・キネハン氏は、3万ドルというのは心理的な節目ではあるが、米国株全体が上昇しているという文脈でとらえるべきだと忠告する。これまでの株高をけん引してきたのは、パンデミック発生以降の巣ごもり生活が事業のプラスに働く巨大ITや、ネット通販、動画配信サービスといった企業だからだ。

キネハン氏は、足元の状況について重要なポイントとして、3月以降選好されてきたズームやペレトンズなどの銘柄が存在する一方、投資家が新たな資金の振り向け先を検討しつつあり、その中で過去数カ月間敬遠されていた銘柄が買われ、エネルギーや金融といったセクターがここにきて値上がりしている点だと解説した。

(Alden Bentley記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・コロナが改めて浮き彫りにした「毛皮工場」の存在
・巨大クルーズ船の密室で横行する性暴力



ニューズウィーク日本版 岐路に立つアメリカ経済
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月3日号(5月27日発売)は「岐路に立つアメリカ経済」特集。関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送トランプ氏、中国の関税合意違反を非難 厳しい措

ビジネス

FRB金利据え置き継続の公算、PCEが消費の慎重姿

ワールド

米、対ロ制裁法案審議へ ロシアの和平交渉遅延を非難

ワールド

トランプ氏「ガザ停戦合意に近づいている」、イラン核
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中