最新記事

中国経済

中国「半導体銘柄」にバブル到来か 対米摩擦で政府が国産支援

2020年6月29日(月)12時24分

米国が中国のハイテク企業に対する締め付けを強化し、この分野で米中の主導権争いが激化する中、中国の半導体産業が投資ブームに沸いている。写真はファーウェイのプロセッサ。2019年5月、広東省深センにあるフェアーウェイ本社で撮影(2020年 ロイター/Jason Lee)

米国が中国のハイテク企業に対する締め付けを強化し、この分野で米中の主導権争いが激化する中、中国の半導体産業が投資ブームに沸いている。株式価値は上場企業、ベンチャーが支援する企業ともに高騰し、バブルの域に達しつつある。

上場している中国半導体企業45社は、株価収益率(PER)が100倍を超え、株式市場で最も割高なセクターとなった。

かつて消費者向けインターネット株に集中していたベンチャーキャピタルも半導体企業に関心を転換、未上場企業の案件に群がっている。ゼロ2IPOのデータによると、半導体セクターへのベンチャー投資は2019年までの2年間で220億元(31億1000万ドル、約3327億円)と、ほぼ倍増した。

創業6年のワイヤレス充電用半導体メーカー、ニューボルタのジンビャオ・フアン共同創業者は「政府だけでなく、民間セクターも含め、中国ではだれもが半導体関連への投資を試みている」と言う。

多くのスタートアップ企業はまだ製品を製造していなかったり、長期的な企業価値を実証していなかったりするため、実態と比べた資産価格バブルを警戒する声もある。しかし、政府は国内育ちの半導体産業の支援をさらに強化しており、米中摩擦にも終わりが見えない中、投資熱は強い。

半導体スタートアップ企業、ネクストVPUの創業者、アラン・ペン氏は「10年前であれば、中国の半導体投資家は2つのテーブルに収まっただろう。今では同じ2つのテーブルに数百人の投資家がひしめき合っている状況だ」と話す。

ネット企業投資は減速

最近まで中国の半導体セクターは政府に大きく頼っていた。「ビッグ・ファンド」の呼称で知られる国家集積回路産業投資基金は2014年、半導体プロジェクトで1390億元を獲得。昨年に2040億元を追加で調達していた。

一方で民間投資家は以前、資本集約的なセクターを敬遠し、インターネットサービス大手の騰訊控股(テンセント・ホールディングス)や食品配送の美団点評など、急成長する消費者向けネット企業に好んで投資した。

しかし、ネット業界の成長が頭打ちになるに従い、投資家は代替的な投資先を模索。米国が中国に関税を課したことや、通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)、その他の中国企業による米ハイテク品購入を米政府が国家安全保障の理由で制限し始めたのもきっかけに、受け皿となる新たな選択肢が開かれている。

チャイナ・グロース・キャピタルのウェイン・シオン氏は、「次のテンセントや美団点評を探しても、中国で過去20年間に見られたような伸びは期待できない」と指摘。「半導体に目を向ければ、膨大な市場機会がある」と言う。


【話題の記事】
・東京都、新型コロナウイルス新規感染60人を確認 6月の感染者合計886人に
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・今年は海やプールで泳いでもいいのか?──検証
・韓国、日本製品不買運動はどこへ? ニンテンドー「どうぶつの森」大ヒットが示すご都合主義.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スイス中銀、第1四半期の利益が過去最高 フラン安や

ビジネス

仏エルメス、第1四半期は17%増収 中国好調

ワールド

ロシア凍結資産の利息でウクライナ支援、米提案をG7

ビジネス

北京モーターショー開幕、NEV一色 国内設計のAD
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中