最新記事

中国ビジネス

中国は世界一の「インフルエンサー経済」大国である

2019年12月10日(火)19時10分
高口康太(ジャーナリスト)

bunditinay-iStock.

<EC市場が世界一という中国で、「検索しないで買う」チャネルとして重要なのがインフルエンサー。彼らが所属するMCNとは何か。海外在住中国人インフルエンサーの有力MCN「速報醤」の創業者に聞いた>

中国の「網紅(インフルエンサー)経済」が面白い。

なにも中国の話をしなくとも、日本にもユーチューバーやインスタグラマーはたくさんいるし、米国やら他の国にもごまんといるではないか。そう思われる方もいるかもしれない。ただ、中国はこの方面では世界一の先進国なのだ。

経済産業省の通商白書2018年版には「各国のB2C EC市場のポテンシャル」という図がある。2016年時点で中国は規模(円の大きさ、9394億4000万ドル)、EC化率(横軸、小売りに占めるECの比率、19.1%)で世界一(下図)。その上、年平均成長率(縦軸、20.2%)でも先進国をはるかに上回る水準となっている。

takaguchi191210mcn-chartB.png

通商白書2018年版より

実際、中国国家統計局が11月14日に発表した最新統計によると、社会消費品小売総額に占めるECの比率は既に36%にまで達している。

これほどまでにECが発展するためには、さまざまな販売チャネルが用意されていなければならない。その1つがインフルエンサーというわけだ。

アマゾンや楽天など日本で一般的に使われているECは、消費者が検索して欲しい商品を探し出すスタイルだが、ネットの検索を好まない、あるいは苦手だという人も少なくない。そういう人でもインフルエンサーの動画やSNSを見て、おすすめされている商品を買うのならば難しくない。しかも、中国のウェブサービスやアプリは動画やSNSからワンタップで購入ページに飛べる便利な作りになっている。

中国のインフルエンサー経済の実態を知るには、彼らインフルエンサーが所属する企業――MCN(マルチ・チャンネル・ネットワーク)と呼ばれる――を見るといい。日本ならばHIKAKINなどが所属するユーチューバー事務所として知られるUUUMが有名だが、中国には大小5000社ものMCNが存在しているという。

中国インフルエンサー経済の実態について、その5000社の中でも、海外在住中国人インフルエンサーの有力MCNである「速報醤」の創業者・賀詞氏に聞いた。

takaguchi191210mcn-2.jpg

有力MCN「速報醤」の創業者・賀詞氏

――速報醤について教えてください。

速報醤には100アカウントを超えるインフルエンサーが所属しています。そのフォロワー数を合計すると、3500万人超。コンテンツの月間閲覧数は15億PV(ページビュー)を超えており、中国の大手SNSである微博(ウェイボー)の海外MCNランキングでは1位を獲っています。

もともと私は日本で働いていたのですが、2010年に「日本流行毎日速報」(下写真)という微博アカウントを開設しました。飲食、ショッピング、観光など、日本の最新トレンドを伝えるアカウントです。自ら運営し、翌年にはフォロワー数は50万人にまで成長するなど、爆発的な成長を遂げました。

takaguchi191210mcn-3.jpg

「日本流行毎日速報」の微博アカウント

人気が出るにつれて、アニメや飲食、旅行など(日本情報の中でも)専門ジャンルに特化したアカウントを増やしていきました。2014年から正式に企業化し、多くのインフルエンサーが所属するMCNに発展しました。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型ハイテク株に買い戻し 利下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 8
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 9
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中