最新記事

高齢化社会

年金制度改革、将来不安は解消遠く 変わらぬ高齢者偏重

2019年11月22日(金)15時27分

政府が年内に見直しをとりまとめる予定の年金制度の方向性が社会保障審議会で明らかになりつつあるが、2000万円問題を契機として高まった現役世代の不安解消期待は望めそうにない。写真は都内で2013年12月撮影(2019年 ロイター/Issei Kato)

政府が年内に見直しをとりまとめる予定の年金制度の方向性が社会保障審議会で明らかになりつつあるが、2000万円問題を契機として高まった現役世代の不安解消期待は望めそうにない。急増する高齢者への給付財源を確保するため、パートなど年金の支え手を増やし働く高齢者を厚遇するが、一方で肝心の給付抑制には踏み込めず、4400万人の現役世代の給付改善への配慮は限定的だ。

「将来の安心」へシフト要望相次ぐ

21日に首相官邸で開催された第3回全世代型社会保障検討会議で、日本商工会議所の三村明夫会頭は安倍晋三首相に、政策の軸足を足元の安心から「将来の安心」へシフトすべきと提言した。高所得の高齢者の負担を増やし、事業主や子育て世代にかかる負担の抑制などの改革を早急に進めるべきという視点だ。

第2回の会議でも、学生企業家から「従来の高齢者偏重の社会保障制度から、どの世代も合理的に社会保障制度の便益を享受できる仕組みを作ってほしい」(株式会社GNEX代表取締役CEO、三上洋一郎氏)との意見が出ている。

こうした現役世代が抱える不安の背景にあるのは、いびつな人口構成だ。年金保険料を支払う側の労働力人口は、現在7400万人が20年後には1400万人減少する一方、給付を受ける65歳以上は300万人増加する。

今夏、厚生労働省が出した年金財政試算では、将来世代への年金支給率(現役男子手取りに対する年金額)は、今の高齢者の受給率61.7%に比べて、40%台にとどまるというシナリオも示されている。

働く高齢者の厚遇、将来給付には逆効果

しかし、5年に1度行われる今回の改革でも、年金の支え手を増やすために、高い収入があっても満額受給できる人を従来より増やす方向で見直しが進んでいる。

現状の「在職老齢年金」という制度では、65歳以上で月47万円以上の収入のある人を対象に給付を減額しているが、高齢者の働く意欲を削ぐとして社会保障審議会では廃止も視野に議論されている。13日の審議会では、収入上限を51万円に引き上げる方向性が打ち出された。  

「就労高齢者増加に合った年金制度に変える」(厚労省幹部)ことを大義名分に、高齢者にはなるべく長く働いてもらい、年金の支え手であり続けてもらうことが狙いだ。

日本総合研究所・主席研究員の西沢和彦氏は「現役世代の将来の所得代替率は減少することなり、将来世代の不安解消には逆行するものだ」と指摘している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国、936億元の超長期特別国債発行 設備更新を支

ワールド

欧州極右・ポピュリスト政党、グリーンランド巡りトラ

ワールド

グリーンランド巡る武力行使取り下げ、米大統領側近の

ビジネス

ゴールドマン、26年末の金価格予想を500ドル上方
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」の写真がSNSで話題に、見分け方「ABCDEルール」とは?
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の核開発にらみ軍事戦略を強化
  • 4
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 5
    飛行機よりラク? ソウル〜釜山「110分」へ――韓国が…
  • 6
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 7
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 8
    「怖すぎる...」モルディブで凶暴な魚の群れに「襲撃…
  • 9
    サーモンとマグロは要注意...輸入魚に潜む「永遠の化…
  • 10
    宇宙人の存在「開示」がもたらす金融黙示録──英中銀…
  • 1
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 2
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 5
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 6
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 7
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 8
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 9
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 10
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中