最新記事

ビジネス

自然災害多発で注目、企業評価の新指標「気候変動リスク」

2019年11月12日(火)12時12分

「近い将来に解消できるリスクではない」

ファンドマネジャーらが気候変動リスクを重視するようになったのは、今年1月に起きたサンフランシスコの電力会社、パシフィック・ガス&エレクトリックの倒産が契機だったという。

2017年と2018年の大規模な山火事は同社の設備が原因とされている。同社は賠償負担が300億ドルを超えるという予想を踏まえ、連邦破産法第11条に基づく破産申請を提出していた。

今年10月23日に発生した山火事は、カリフォルニア州最大の公益企業である同社の資金調達を危うくし、140億ドル規模の再生計画の先行きに暗雲をもたらす可能性がある。

一方、米国環境情報センターによれば、10億ドル以上の損害をもたらした気象・気候災害は今年に入ってから10件を数えており、1980年から2018年にかけての通年平均である6.3件に対して、すでに2倍近くに達している。

スイスの再保険会社、スイス・リーによれば、8月までの自然災害関連の保険請求15億ドルのうち、13億ドルは山火事やヒョウなど、かつては二次的な危険とされていた事態に関する請求だという。

山火事の増加を受けて、ヒスコックスなどの保険会社は新たなリスクモデルを導入。カリフォルニアなどリスクの高い地域では、一部の顧客に対する保険提供を停止している。同州保険監督局によれば、全体では保険会社の10%が州内の山火事多発地域における契約更新を断っているという。

S&Pグローバル傘下のトゥルーコストなどの調査会社は、投資家の評価を助けるため気候リスク分析の提供を拡大している。同社は今後数週間以内に大きなリスクを抱える企業に焦点を当てたレポートを公表するという。

シリコンバレーのスタートアップ企業ジュピターは今年3月、2300万ドルの資金調達を完了したと発表した。分析サービス事業を拡大することが目的で、これによって、投資家や企業に特定の地点における短期・長期の詳細な気象パターンを提供できるようになるという。

PGIMフィクストインカムのマネージング・ディレクター(マルチセクター・戦略担当)を務めるグレゴリー・ピーターズ氏は、「これ(気候変動リスク)は、近い将来に解消される類いのものではない」と話す。

ピーターズ氏率いる不動産投資担当チームのアナリストらは気候変動リスクにますます注目するようになり、同氏はカリフォルニアの公益事業数社の保有ポジションを縮小した。

「公益事業各社が抱えているのは、数年前だったら我々も必ずしも考慮しなかったような、新しい種類のリスクだ」(同氏)という。

(翻訳:エァクレーレン)

[ニューヨーク ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191119issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

11月19日号(11月12日発売)は「世界を操る政策集団 シンクタンク大研究」特集。政治・経済を動かすブレーンか、「頭でっかちのお飾り」か。シンクタンクの機能と実力を徹底検証し、米主要シンクタンクの人脈・金脈を明かす。地域別・分野別のシンクタンク・ランキングも。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮ハッカー集団、韓国防衛企業狙い撃ち データ奪

ワールド

アジア、昨年は気候関連災害で世界で最も大きな被害=

ワールド

インド4月総合PMI速報値は62.2、14年ぶり高

ビジネス

3月のスーパー販売額は前年比9.3%増=日本チェー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバイを襲った大洪水の爪痕

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    冥王星の地表にある「巨大なハート」...科学者を悩ま…

  • 9

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 7

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中