最新記事

ビジネス

自然災害多発で注目、企業評価の新指標「気候変動リスク」

2019年11月12日(火)12時12分

カリフォルニア州で2年連続となる大規模な山火事が発生したことを受け、米国では企業のリスクを測る新たな指標の導入が進んでいる。写真は山火事の燃え広がりを抑える難燃剤を散布する様子。11月1日、カリフォルニア州サンタポーラで撮影(2019年 ロイター/Daniel Dreifuss)

カリフォルニア州で2年連続となる大規模な山火事が発生したことを受け、米国では企業のリスクを測る新たな指標の導入が進んでいる。評価の対象となるのは「気候変動に対する抵抗力」だ。

企業側も危機対応の意識高まる

海面上昇から記録的な熱波まで、様々に広がる気候事象は利益や売上高にどのような影響を与えるのか。そうしたリスクに企業がどう対応できるのか。投資家、アナリスト、調査会社、そして各企業も、そうした評価や判断をこれまで以上に重視するようになっている。

特にカリフォルニア、フロリダ、ルイジアナなど気象変化のリスクが高まっている地域では、立地企業が危機に備えた事業計画の有無や妥当性を問われる局面が増えている。

ロイターがリフィニティブの企業データを分析したところ、四半期業績報告で気候変動が経営に与える潜在的な影響について触れた企業は、今年初めからの合計で70社を越えている。昨年はもちろん、2014年以降のどの年と比べても、2倍以上の数だ。

他に先んじて気候変動リスクに注目してきたのは、企業の環境・社会・ガバナンスといった側面を重視する、いわゆるESGファンドだった。だが最近では、これまで企業経営に影響する環境要因を考慮していなかったファンドマネジャーも、対象企業が抱えるリスクやその可能性をこれまでよりも慎重に検討するようになった。

コロンビア・リアルエステート・ファンドの上級ポートフォリオ・マネジャーを務めるアーサー・ハーレイ氏がポートフォリオに含めている企業、たとえばエクイティ・ライフスタイル・プロパティーズなどは、アナリスト向けの収益報告の中で、新規に港湾施設を購入する際に水位上昇の可能性を評価している。同社の株価は年初来43%も上昇した。

同氏は気候リスクに先手で対応しているエクイティ・ライフスタイルやボストン・プロパティーズといった企業に積極的に投資するようになった。これらの企業は、開発候補地の標高にもっと注意を払う、重要な設備の建築設計には床面よりも高く設置するといった条件を盛り込む、など様々な対応をとっている。

「企業が戦略を大きく変更するという期待はできないが、気候変動への抵抗力をに関するプランについて経営陣と対話する機会は増えている」と同氏は語る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想下回る 賃金伸び鈍化

ワールド

欧州委、中国EV3社に情報提供不十分と警告 反補助

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3

ビジネス

米雇用なお堅調、景気過熱していないとの確信増す可能
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中