最新記事

日米貿易戦争

日米貿易協定承認案が衆院通過 懸念される第2弾交渉での数量規制

2019年11月19日(火)14時30分

衆院本会議で日米貿易協定の承認案が可決し、与党側は12月9日の会期末までの参院承認、来年1月1日からの発効を目指す。写真は米フロリダ州で昨年4月撮影(2018年 ロイター/Kevin Lamarque)

衆院本会議で日米貿易協定の承認案が可決し、与党側は12月9日の会期末までの参院承認、来年1月1日からの発効を目指す。今後は米国による自動車・部品関税の扱いが焦点になるほか、米国側は将来的にはサービス分野も含めた広範な自由貿易協定(FTA)締結を目指しており、交渉再開の時期や内容も注目される。

交渉再開に向けて思惑が交錯

発効後を見据えて、問題となるのは日米交渉第2弾の時期だ。9月の日米首脳会談の際にはライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は、来年日米で再交渉の対象分野を議論する方針を明らかにしている。米国側には金融、保険分野などに加えて、「農業分野でも乳製品などを議論したい」(交渉関係筋)との意見がある。日本側は米国への自動車および部品の関税引き下げを議論したいとの立場だが、「下手に再交渉すると数量規制を蒸し返されるリスクがある」(政府関係者)として、交渉に慎重な声もある。また第2弾での交渉が合意されても発効は米大統領選後となるため、現時点でトランプ政権内での優先順位は高くないとの憶測も聞かれる。

これまで米国は対米貿易赤字の削減を交渉の目標に掲げ、貿易赤字の最大の要因である自動車について米国現地生産拡大と日本からの輸出削減を求めてきたが、交渉関係筋によると「8月末のフランスでの日米首脳会談で、安倍晋三首相が米国からのトウモロコシ大量購入を提言した効果があった」という。

ある与党関係者によると「米下院がトランプ大統領の弾劾調査を進め始め、トランプ政権として、米国内でも異論のある、金融市場を下押しするような激しい保護貿易政策を採りにくくなったのも一因だ」と解説する。

もっとも、環太平洋連携協定(TPP)には盛り込まれていた日本から米国に輸出される自動車や部品に対する関税の撤廃が除外されたため、日米の貿易量に占める関税撤廃率が小さく、撤廃率9割を目安とする世界貿易機関(WTO)のルールに違反すると野党は批判している。

政府は10月、日米貿易協定が発効すれば国内総生産を0.8%底上げするとの試算を公表しているが、試算では米国の自動車・部品関税の撤廃を前提としている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米製造業生産指数、4月は0.4%低下 自動車生産の

ワールド

ロシア、ウクライナと妥協案協議の用意 交渉代団長が

ワールド

トルコ、ロシア・ウクライナ首脳会談の開催用意 「準

ワールド

ゼレンスキー氏「停戦合意ならプーチン氏との会談不要
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    加齢による「筋肉量の減少」をどう防ぐのか?...最新研究が示す運動との相乗効果
  • 2
    宇宙から「潮の香り」がしていた...「奇妙な惑星」に生物がいる可能性【最新研究】
  • 3
    ヤクザ専門ライターが50代でピアノを始めた結果...習い事、遅かった「からこそ」の優位とは?
  • 4
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食…
  • 5
    戦車「爆破」の瞬間も...ロシア軍格納庫を襲うドロー…
  • 6
    宇宙の「禁断領域」で奇跡的に生き残った「極寒惑星…
  • 7
    対中関税引き下げに騙されるな...能無しトランプの場…
  • 8
    サメによる「攻撃」増加の原因は「インフルエンサー…
  • 9
    トランプに投票したことを後悔する有権者が約半数、…
  • 10
    「2025年7月5日天体衝突説」拡散で意識に変化? JAX…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    加齢による「筋肉量の減少」をどう防ぐのか?...最新研究が示す運動との相乗効果
  • 3
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因は農薬と地下水か?【最新研究】
  • 4
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 5
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 6
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 7
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 8
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 9
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 10
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    加齢による「筋肉量の減少」をどう防ぐのか?...最新…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中