最新記事

米中貿易戦争

トランプ=習近平、10月閣僚級交渉開催でも深まる貿易戦争の溝

2019年9月7日(土)11時25分

米中は10月初旬に閣僚級の通商交渉を行うことで合意したが、互いに制裁関税の強化、約束の不履行、誹謗中傷の応酬などを繰り広げており、妥結はこれまで以上に見通しにくくなっている。写真は5月7日、北京の天安門で撮影(2019年 ロイター/Thomas Peter)

米中両国はこのほど10月初旬に閣僚級の通商交渉を行うことで合意した。しかし両国は5月に交渉が暗礁に乗り上げて以降、互いに制裁関税の強化、約束の不履行、誹謗中傷の応酬などを繰り広げており、妥結はこれまで以上に見通しにくくなっている。

通商交渉を巡る最近の両国の動きをまとめた。

反故にされた約束

米中両国は10月の閣僚級協議に向けて、9月半ばに準備協議を開く。両国は良好な環境作りに取り組むことで合意したが、具体策は示していない。

5月には中国が知的財産権侵害や技術移転強要といった問題を解決するための法改正の約束を撤回して交渉が行き詰まったが、両国はいずれも交渉に臨む姿勢を変えるとのシグナルを発していない。

米当局者は先に交渉再開は中国が5月の方針転換前の協議文書に基づく話し合いを受け入れるかどうかにかかっていると述べたが、中国が合意した兆しはみられない。

トランプ米大統領と習近平・中国国家主席は6月に大阪で会談し、中国側は米国産大豆2000万トンを購入すると約束したが、これまでの購入量はその半分にとどまっている。一方、米国は中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)に米企業が部品を売ることを禁じた措置を緩和すると約束したが、実行していない。

ファーウェイ問題と香港問題

中国政府は米企業にファーウェイとの取引を事実上禁じたトランプ氏の決定が痛みのもとになっている。中国は通商交渉での合意の有無にかかわらず、ファーウェイへの制裁を解除するよう求めている。しかし米政府は他国に対してファーウェイとの取引を減らすように働きかけ、他の中国企業の制裁対象リスト掲載をちらつかせている。

トランプ氏が8月14日、香港の大規模デモに対して中国政府が武力介入すれば米中通商交渉での取引が難しくなると述べたことも両国の緊張を高める恐れがある。香港の抗議デモがさらにエスカレートすればその可能性がさらに高まるだろう。

知的財産権と技術移転

5月に交渉が行き詰まる前に米当局者は、知的財産権保護と技術移転強制の2点で進展があり、中国がこれまでよりも踏み込んだ提案を行ったと述べていた。また米当局者はサイバー犯罪、サービス、通貨、農業、非関税貿易障壁などの分野でも進展があったとしていた。

一方、中国は世界貿易機関(WTO)のガイドラインに則った政府補助の実施を提案したと説明したが、詳細は明らかにしなかった。

しかし話し合いが物別れとなった後、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は議会公聴会で、中国が中国のコンピューター関連サービスへの米国のアクセスなどデジタル関連の通商問題で中国が約束を撤回したと述べた。

米当局者は中国が今後6年間に農産物やエネルギー、工業製品など1兆ドル余りの財の購入を提案したと述べたが、中国は実際の購入についてはまだ両国間で合意に至っていないとしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ首都に夜通しドローン攻撃、23人負傷 鉄

ビジネス

GPIF、前年度運用収益は1.7兆円 5年連続のプ

ワールド

「最終提案」巡るハマスの決断、24時間以内に トラ

ビジネス

トランプ氏、10─12カ国に関税率通知開始と表明 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 5
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 6
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 7
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 8
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 9
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 10
    ロシア人にとっての「最大の敵国」、意外な1位は? …
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中