最新記事

米中貿易戦争

トランプ=習近平、10月閣僚級交渉開催でも深まる貿易戦争の溝

2019年9月7日(土)11時25分

交渉手段としての関税

5月に交渉が暗礁に乗り上げる前に争点となっていたのは、トランプ政権が中国からの輸入品2500億ドル相当に課した25%の制裁関税の撤廃の有無だった。米国は中国に合意を守らせるため、制裁関税の一部継続を望んだが、中国は全制裁関税の即時撤廃を求めていた。

その後事態はエスカレート。米国はこの2500億ドル相当について国慶節(中国の建国記念日)に当たる10月1日に制裁関税を30%に引き上げる予定。また別途3000億ドル相当についても一部については9月1日に関税を15%に引き上げ、残りも12月15日に15%に引き上げる計画だ。

アナリストによると、米政府は中国への歩み寄りを示すため、5%の税率引き上げの延期や、12月15日に予定している15%の制裁関税導入の延期を受け入れる可能性がある。

中国は9月1日から米国産原油に5%の制裁関税を課しているが、こちらも12月15日に予定している税率引き上げを延期する可能性がある。

国内への悪影響

トランプ氏は制裁関税のコストを負うのは中国だと繰り返し強調し、国内の小売業者や製造業者への悪影響を否定しているが、最近になって米中通商紛争が短期的には国内経済をも損なうと認め始めた。

中国の交渉責任者である劉鶴副首相も5日、国内経済への下押し圧力は強まっているが、政府はあらゆる困難に対応することが可能との認識を示した。

まだ使っていない武器

中国は、中国企業に被害をおよぼしているとみなす外国企業のリストを作成するとしている。また報復手段としてレアアース(希土類)の米国への輸出制限も示唆している。このほか中国が米ボーイング製航空機の注文を取消す可能性もある。

トランプ氏はゼネラル・モーターズ(GM)など米企業に対して中国から生産拠点を引き揚げるよう求めている。

背景

中国は航空宇宙、ロボット、半導体、人工知能(AI)、新エネルギー車など戦略的な10セクターについて、2025年までに産業基盤を底上げする方針を打ち出している。しかし米国は中国が技術移転の強制や知的財産権の侵害など、不公正な手段に訴えていると不満を抱いている。一方で中国は、米国の動きは世界経済における中国の台頭を妨害するものと受け止めている。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任し国連大使に指

ワールド

米との鉱物協定「真に対等」、ウクライナ早期批准=ゼ

ワールド

インド外相「カシミール襲撃犯に裁きを」、米国務長官

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官を国連大使に指名
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中