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日本の観光地、なぜこれほど「残念」なのか 優先すべきは情報発信より中身の「整備」

2019年5月30日(木)18時40分
デービッド・アトキンソン(小西美術工藝社社長) *東洋経済オンラインからの転載

ほかにも、ピント外れな情報発信をしている例は少なくありません。例えば、「サムライの精神性に触れられる街」と盛んに宣伝している地域なのに、武家屋敷もなければ、道場も公開されていない。何かの体験ができるようになっているわけでもなければ、博物館などサムライの文化を説明する施設もない。お城はあるにはあるものの、鉄筋コンクリートで中はほとんど空っぽの状態で、楽しめるものは何もない。

要するに、この地域における「サムライ文化」は、その地域の過去の特徴で、その地方の誇りですが、もはや現在では「架空の世界」なのです。お話にすぎません。

このような状態では、「日本の魅力の1つであるサムライ文化に触れられる」と期待して、有給休暇をとったうえ、高いお金を払ってやってきた海外からのお客さんを困惑させるだけです。

歴史的な事実があっても、それを実感できるものが何も整備されていないようでは、外国人観光客を満足させることはできません。日本人であれば「何々の跡」という石碑をありがたがって足を運ぶ人もいるかもしれませんが、時間もお金も日本人の何倍、何十倍もかけてやってくる多くの外国人にとっては、石碑はただの石でしかなく、それほど魅力のあるものではありません。

日本で観光業に携わっている人に対して、声を大にして言いたい。重要なのは、まず観光地としての十分な整備をし、インフラを整えることです。情報発信はその後で十分です。

宣伝の前に商品開発するのは当たり前

ちょっと考えれば、私の言っていることが常識なのはすぐわかると思います。要は、情報発信をする前に、商品開発をきちんとやろうと言っているだけだからです。

まだ売る車が出来てもいないのに、車を作る技術、その車の名前、イメージを自慢する動画を作って発信したところで、ビジネスにはなりません。

多くの観光地は、これと同じことをやっているのです。道路表記はない、文化財の説明も多言語化していない、二次交通もなければ、十分な宿泊施設もない。各観光資源の連携もできていないのに、情報発信だけはしている。こんな観光地が日本中にあふれかえっています。

多少はマシなところでも、パッチワークのように部分的にしか整備ができていないのが現実です。車の例で言うと、エンジンの一部と、車体の一部しか出来ていないのに売ろうとしているのと同じです。観光地の場合、総合的な整備がされていないところが実に多いのです。それなのに情報発信にばかり熱心なのは、やはり順序が違うと思わざるをえません。

とくに、今はネットの普及によって、観光資源の魅力があれば勝手に口コミで広がってくれるので、昔のように観光地が情報発信する必要性が薄れています。

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