最新記事

徹底解剖 アマゾン・エフェクト

「アマゾン本体とAWSが表裏一体なのが最強の秘訣」田中道昭教授

INTERPRETING JEFFISM

2019年2月26日(火)10時45分
森田優介(本誌記者)

AWSの本質は「ビッグデータ×AI」のプラットフォームであること。今ではAWSで、企業向けにブロックチェーンのサービスや宇宙に関わるビッグデータの提供も始めている。

――AWSといえば、業界2位のマイクロソフトもクラウド事業の売り上げを伸ばしている。アマゾンの躍進を恐れる小売企業を味方に付けているという報道もあったが。

(AWSを使うと全てをアマゾンに握られると小売企業が)恐れているという理由は、当てはまらないのではないか。今に始まった話ではない。

ただし、マイクロソフトはかなり追い上げてくるだろう。同社のサトヤ・ナデラCEOが数年以内にAWSを抜いてクラウドで首位になると宣言しているし、今後はプライバシーの配慮がポイントになる。

今年のCESを視察して感じたのは、アメリカでプライバシーが相当言われるようになってきていること。マイクロソフトも昨年、データを二次利用しない方針を明確にしている。だが、アマゾンにとってデータは生命線だ。プライバシーに配慮します、データを利用しませんなどと、ベゾスは絶対に言わないだろう。となれば、プライバシーを配慮する企業の評価が高まり、マイクロソフトに追い風が吹く可能性はある。

実際、シアトルで会った先のアマゾン社員も、AWSの競合はどこかと聞くと「マイクロソフトだ」と答えた。

――アマゾンのEC事業のほうは、何か懸念要素はあるか。

経済全体がスローダウンする可能性など、当たり前に議論されているポイントもあるが、強いて言うなら、リアル小売企業による「反撃」の動きがある。アマゾンへの逆風とまでは言えないかもしれないが。

アマゾンがホールフーズ・マーケットを買収して、それからどうなったか。「アマゾン・エフェクト」の脅威が増したという見方もあるが、一方で、アマゾンといえどもリアル店舗が必要だったという見方もできる。Retailer(小売企業)に対するE-Tailer(EC企業)という用語があるが、最近はNew E-Tailerという概念が使われ始めている。リアル店舗を始めたEC企業のことだ。

ネットで買った商品を顧客が受け取れるロッカーを設置し、「ラストワンマイル(最後の配送拠点から顧客に配達する段階)」の問題解決に使うのだ。アマゾンがホールフーズをその拠点にし、一方でウォルマートも自社ECのラストワンマイルに店舗を使い始めている。ただ、1月の訪米で見て回ったが、アマゾン以外の企業のロッカーはあまり使われていない印象を持った。やはりECが定着した企業でないと、この先どれだけ広がるかは分からない。

ECは簡単ではない。リアル店舗のよさも確かに見直されてきている。手放しでアマゾンがすごいと称賛し続けても意味はない。

※この記事は本誌「徹底解剖 アマゾン・エフェクト」特集の1記事の拡大版。詳しくは2019年3月5日号(2月26日発売)をご覧ください。

ニューズウィーク日本版 総力特集:ベネズエラ攻撃
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年1月20号(1月14日発売)は「総力特集:ベネズエラ攻撃」特集。深夜の精密攻撃で反撃を無力化しマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ大統領の本当の狙いは?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

タイ政府が大型建設を一時停止、クレーン落下の死亡事

ビジネス

ポピュリズムに毅然と対応を、英中銀総裁表明 経済リ

ビジネス

ポルシェの25年販売、10%減 中国需要の低迷響く

ワールド

ブルガリア大統領、総選挙実施を発表 組閣行き詰まる
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 2
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑について野次られ「中指を立てる」!
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 5
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 6
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 7
    イランの大規模デモ弾圧を可能にした中国の監視技術─…
  • 8
    日中関係悪化は日本の経済、企業にどれほどの影響を…
  • 9
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 10
    「ひどすぎる...」滑走路にペットを「放置」か、乗客…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 4
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 5
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 6
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 7
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 8
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 9
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 10
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中