最新記事
大気汚染

「環境に優しい」はウソ? 中国の電気自動車、発電の元は石炭から

大気汚染対策で電気自動車大国となった中国だが、実際にはガソリン車の2〜5倍の汚染物質を吐き出している

2016年1月28日(木)17時14分

沈黙のクルマ  1月27日、自動車メーカー各社は、中国のグリーンカー市場の急成長を予想するが、環境に優しいはずの電気自動車が逆に、大気汚染をさらに悪化させるとの懸念が広がっている。写真は深セン市で2011年6月撮影(2016年 ロイター/Tyrone Siu)

 自動車メーカー各社は、中国のグリーンカー市場の急成長を予想するが、環境に優しいはずの電気自動車が逆に、大気汚染をさらに悪化させるとの懸念が広がっている。というのも、電気自動車を走らせるための電力のほとんどが、なお石炭による火力発電から作られているからだ。

 フォルクスワーゲン(VW)の中国責任者は、北京のグリーンカー会議で、向こう3─5年に15の新エネルギーモデルを投入する計画と表明。中国の電気自動車とプラグインハイブリッド車の生産は、2020年までに年200万台とほぼ6倍になると予想した。

 BYD<002594.SZ><1211.HK>の会長も、同じイベントで、同社の電気自動車販売台数は向こう3年にわたって、毎年倍増すると強調した。

 中国は、都市で深刻な問題になっている大気汚染の緩和に向け電気自動車の普及を推進している。会議に出席した財政相によると、電気自動車の販売は昨年4倍となり、中国は電気自動車の最大市場になった。

 中国国内では現在、乗用車全体に占める新エネルギー車の割合は、1%弱に過ぎないとされる。ただし、電気自動車は着実に増加しており、大気汚染の悪化に寄与する可能性もその分高まっている。

 清華大学の研究によると、中国で充電される電気自動車はガソリン車の2─5倍の粒子状物質(PM)や化学物質を排出しているという。

 中国のデータバンク、能源与交通創新中心(エネルギー・交通イノベーションセンター)のディレクター、アン・フェン氏は「海外の事例でも、大気浄化を電気自動車に依存することが、必ずしも得策ではないことが分かっている。まず、発電所のクリーン化が必要だ」と述べた。

まずやるべきは発電所のクリーン化

 中国は、炭素排出量の削減目標達成に向け、再生可能エネルギーや「クリーン石炭」を使った発電への移行を進める方針を示している。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ハセット氏のFRB議長候補指名、トランプ氏周辺から

ビジネス

FRBミラン理事「物価は再び安定」、現行インフレは

ワールド

ゼレンスキー氏と米特使の会談、2日目終了 和平交渉

ビジネス

中国万科、償還延期拒否で18日に再び債権者会合 猶
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 6
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 7
    世界の武器ビジネスが過去最高に、日本は増・中国減─…
  • 8
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 9
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 5
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 6
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中