最新記事

自動車

スズキ、提携解消でVW保有の自社株買い戻しへ 

4年近く紛糾した提携問題を解消したものの、今後の生き残り戦略は見えず──

2015年8月31日(月)11時32分

8月30日、独フォルクスワーゲン(VW)との資本提携の解消を求めていたスズキは、国際商業会議所国際仲裁裁判所がスズキ側の要求を認める判断を下したと発表した。スズキはVW保有の19.9%分の自社株を市場価格で買い戻す。写真は、会見するスズキの鈴木修会長(右)(2015年 ロイター/Issei Kato)

[東京 30日 ロイター] - スズキ<7269.T>は30日、国際商業会議所の国際仲裁裁判所が、独フォルクスワーゲン(VW)との資本提携解消を求めていたスズキ側の要求を認める判断を下したと発表した。スズキはVWが保有する19.9%分の自社株すべてを市場価格で買い戻す。

スズキは昨年12月に時間外取引を通じた株式買い戻しの計画を発表済みで、買い戻しに備え、すでに必要な資金を準備している。同社は買い戻し額を公表していないが、28日の終値で試算すると、約4600億円となる見込み。

同裁判所はVWに対し、保有するスズキ株をスズキか、スズキが指定する第三者に売却するよう命じた。ただ、VWが主張したスズキの契約違反も一部認め、それによる損害の有無や損害額を継続して審議する方針という。

30日に会見したスズキの鈴木修会長は、仲裁裁定に「満足している。最大の目的を達成できた」と述べた。VWとの提携解消後に他社と手を組む可能性については「これから考える」とした上で、社内でハイブリッド車の開発が進んでいることなどを挙げ、「自立して生きていくことを前提に考えていきたい」と語った。VW問題の解決にあたるため続けていた会長職から退くかとの質問に対しては「まったく考えていない」と答えた。

一方、スズキ側の契約違反が一部認定されたことに対し、会見に同席した原山保人副会長は「まったく予想外で驚いている」と語り、VWがスズキに損害賠償を請求できる権利を持っているため、今後のVWの動きなどを注視していくとした。

VWも同日、同裁定について「事実が明確になったことを歓迎する」との声明を発表した。その中でVWは、裁定がVW側による協力合意義務の完全な履行を認定する一方、「スズキ側の合意違反を指摘した」と明記。次の措置については「今後数日間かけて、投資銀行および弁護士と協議する」としている。

同社が保有するスズキの株価は、取得当時と比べてほぼ2倍に上昇しており、売却益が出る見込みだ。

スズキは2009年にVWとの資本・業務提携を発表したが、環境技術の供与や経営の独立性などをめぐって対立が深まり、スズキが11年9月に提携解消を申し入れた。しかし、VWが求めに応じず、スズキは同年11月に第三者機関の国際仲裁裁判所に仲裁を申し立てていた。

(白木真紀)

120x28 Reuters.gif

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル指数下落、雇用統計は強弱混合 失

ビジネス

米国株式市場=ダウ・S&P続落、経済指標を精査 エ

ビジネス

米総合PMI、12月は半年ぶりの低水準 新規受注が

ワールド

バンス副大統領、激戦州で政策アピール 中間選挙控え
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 8
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「日本中が人手不足」のウソ...産業界が人口減少を乗…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中