最新記事

エネルギー

米雇用で太陽光が石炭を抜いた

「すでに石炭産業を追い抜いた」という指摘に同業界は反発するが、来年には間違いなく逆転する

2015年2月24日(火)15時53分
ジョーダン・ワイスマン

勢いはいつまで? 将来的にはパネル設置の仕事も少なくなる Mario Anzuoni-Reuters

 再生可能エネルギーがまたメインストリームに一歩近づいた。アメリカの一部の地域では太陽光による発電コストが化石燃料のそれと変わらないほど安くなり、今やアップルなどの大企業がその電力を大量に購入する時代になった。コスト意識が強い民間企業が太陽光エネルギーを選ぶのは、州政府が政治的なジェスチャーで太陽光発電や風力発電を導入するのとは次元が違う。

 その結果何が起きたか。アメリカではどうやら、太陽光産業の雇用者数が石炭産業の雇用者数を抜いたらしいのだ。

 大統領経済諮問委員会が先週発表した「大統領経済報告書」によれば、石炭産業の雇用者数は現在約8万人。80年代からどんどん落ち込んでいる(ただし石油・天然ガス産業の雇用者数はここ4〜5年で盛り返している。シェール革命の力だ)

 一方、太陽光産業の雇用者数は17万4000人に上る(太陽光財団調べ)。

 これらを単純に比較することが正しいかどうかは、議論の余地がある。米鉱山安全衛生庁(MSHA)によれば、その雇用者数は鉱山の下請け業者で働く労働者も含めれば12万3000人以上に達する。石炭を運搬する鉄道・船など輸送関係の仕事を加えれば、さらに19万5000人へと膨らむ。

 だが、石炭産業は太陽光産業より多くの労働者を雇用している、という石炭業界の言い分が仮に正しかったとしても、来年には逆転するだろう。太陽光財団の予測では、太陽光産業の雇用は今年末までに21万人になる。

 それがいつまでも続く保証はない。太陽光産業のほとんどの労働者は太陽光パネルの設置に従事している。いつか太陽光発電の成長が減速すれば、その仕事の一部は消滅するだろう。再生可能エネルギーに対する連邦政府の税額控除も17年で終わる予定なので、早ければその時点で成長は頭打ちになるかもしれない。

 長期的な雇用だけを考えれば、確かに石炭産業に利がある。石炭のような採掘産業は、労働者を使って常に地面を掘り続ける必要がある。限りある資源を掘り続けなければならないことこそが、石炭産業の最大の問題なのだが。

© 2015, Slate

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ソフトバンクG、4―6月期純利益4218億円 傘下

ワールド

焦点:貿易巡る米インド対立、広範な協力関係に影響も

ビジネス

コラム:半導体大手、トランプ関税危機ひとまず回避 

ワールド

ベトナム最高指導者、10日から訪韓 貿易・投資など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 2
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの母子に遭遇したハイカーが見せた「完璧な対応」映像にネット騒然
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 5
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 6
    バーボンの本場にウイスキー不況、トランプ関税がと…
  • 7
    【徹底解説】エプスタイン事件とは何なのか?...トラ…
  • 8
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 9
    大学院博士課程を「フリーター生産工場」にしていい…
  • 10
    【クイズ】1位は中国で圧倒的...世界で2番目に「超高…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 8
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 9
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 10
    メーガンとキャサリン、それぞれに向けていたエリザ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 10
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中