最新記事

タクシー

個人情報が筒抜け「ウーバー」の落とし穴

快進撃が続く配車サービスだが、幹部の失態とシステムの不備でトラブル続出

2014年11月27日(木)18時03分
ポリー・モセンズ

サービス拡大の続くウーバーだが、客を奪われたタクシードライバーの反発も Max Whittaker-Reuters

 創業から5年で50カ国に進出し、時価総額も約200億ドルに達した米配車サービス会社「Uber(ウーバー)」。アプリ1つで手軽にタクシーを呼べるサービスで、他社のタクシー運転手が抗議デモを起こすほどの人気だが、経営幹部の放言や個人情報の乱用などが相次ぎ、顧客の信頼も怪しくなっている。

 発端になったのは、役員の1人がウーバーに批判的な女性ジャーナリストに対し、私生活を暴いて報復すると発言したことだった。ニューヨーク支社の社員が実際に、彼女の利用歴を調べるためウーバーに登録された個人情報を照会したことも発覚。ユーザーの個人情報に社員がいとも簡単にアクセスできる状態だったのだ。

 批判を受け、ウーバーは個人情報保護方針をこう変更した。「ウーバーはすべての社員に、営業上の合法的な目的がある場合を除き、乗客およびドライバーの個人情報に触れることを禁じる」

 一見するとうまい作文だが、1つ肝心な点が抜け落ちている。ウーバー利用者とドライバーがやりとりする専用電話番号の問題だ。

 ウーバーでは、乗客とドライバーのやりとりに「ダミー番号」が利用されている。例えば、ダミー番号が867?5309だとしよう。乗客がウーバーアプリで配車を要請すると、ドライバーの携帯電話には867?5309という番号が出る。次にドライバーが利用者へ連絡すると、乗客の電話の画面にも867?5309と表示される。まるで自分自身に電話しているかのようだが、本当の電話番号は交換されない。乗客が車内に忘れ物をしたときも、ドライバーにダミー番号で連絡できる。

「ダミー番号は別の客からの利用申請を受理するか、降車から約30分経過するまで有効だ」と、ウーバーの広報担当者は言う。

配車システムに欠陥あり

 しかし、このシステムには欠陥がある。癌を患うアレクサンドラ・クレイグリーが、病院にスカーフを忘れたことに気付き、ウーバーの配車をキャンセルしたときのこと。ドライバーはキャンセルに怒り(予約のわずか1分後だったのに)、「おまえには天罰が下る」という内容のSMSを送ってきたという。

 新規客もなく、クレイグリーの予約から30分もたっていなかったため、ドライバーはダミー番号からSMSを送信できた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相、反ユダヤ主義助長と豪首相を非難 ビ

ビジネス

インタビュー:プライベートデット拡大へ運用会社買収

ワールド

ウクライナのNATO加盟断念、和平交渉に大きく影響

ワールド

米ブラウン大銃撃、当局が20代の重要参考人拘束
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中