最新記事

米経済

最低賃金が最低過ぎる超大国アメリカ

40%も賃金を上げたオバマも寛大とは呼べない理由

2014年2月20日(木)14時55分
アンナ・バーナセク

貧しさが露呈 ファストフードの最低賃金を「時給15ドルに」と求める声 David Ryder-Reuters

 オバマ米大統領が国民約50万人に昇給のプレゼントを約束した。先月末に行った一般教書演説で、オバマは連邦政府の契約職員の最低賃金を現行の時給7.25ドルから約40%増の10.10ドルに引き上げると表明。さらに、全米の最低賃金も同じレベルまで引き上げるよう議会に要請している。

 何とも寛大な方針に聞こえるが、遅過ぎるという見方もあるだろう。アメリカの最低賃金は他の先進国に比べてかなり低いのだ。

 OECD(経済協力開発機構)の最低賃金ランキングによれば、アメリカは現在11位。時給10.10ドルに引き上げたとしても8位止まりで、上位10カ国の平均を下回ることになる。現在の1位はオーストラリアの時給15.75ドル、以下ルクセンブルク(14.21ドル)、フランス(12.55ドル)、アイルランド(12.03ドル)、ベルギー(11.92ドル)、オランダ(11.38ドル)、ニュージーランド(10.22ドル)と続く。

 オバマの意に反し、共和党は賃上げに応じるつもりはないことを明確にしている。しかし、民間企業で最低賃金以下で働く労働者は300万人以上。その多くが若者や女性、飲食店などサービス業で働く人たちだ。時給7.25ドルではフルタイムで働いたとしても、年収1万4500ドルにしかならない。

 最低賃金とは国の豊かさを測る指標でもある。アメリカはいろいろな意味で世界のトップを走るといわれるが、最低賃金に関しては先進国の中では平均以下だ。

[2014年2月18日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドイツ銀、第3四半期は黒字回復 訴訟引当金戻し入れ

ビジネス

JDI、中国安徽省の工場立ち上げで最終契約に至らず

ビジネス

ボルボ・カーズの第3四半期、利益予想上回る 通年見

ビジネス

午後3時のドルは152円前半、「トランプトレード」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:米大統領選 イスラエルリスク
特集:米大統領選 イスラエルリスク
2024年10月29日号(10/22発売)

イスラエル支持でカマラ・ハリスが失う「イスラム教徒票」が大統領選の勝負を分ける

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 2
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」ものはどれ?
  • 3
    リアリストが日本被団協のノーベル平和賞受賞に思うこと
  • 4
    逃げ場はゼロ...ロシア軍の演習場を襲うウクライナ「…
  • 5
    トルコの古代遺跡に「ペルセウス座流星群」が降り注ぐ
  • 6
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 7
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 8
    中国経済が失速しても世界経済の底は抜けない
  • 9
    ウクライナ兵捕虜を処刑し始めたロシア軍。怖がらせ…
  • 10
    「ハリスがバイデンにクーデター」「ライオンのトレ…
  • 1
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 2
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の北朝鮮兵による「ブリヤート特別大隊」を待つ激戦地
  • 3
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア兵の正面に「竜の歯」 夜間に何者かが設置か(クルスク州)
  • 4
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
  • 5
    目撃された真っ白な「謎のキツネ」? 専門家も驚くそ…
  • 6
    ウクライナ兵捕虜を処刑し始めたロシア軍。怖がらせ…
  • 7
    逃げ場はゼロ...ロシア軍の演習場を襲うウクライナ「…
  • 8
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 9
    裁判沙汰になった300年前の沈没船、残骸発見→最新調…
  • 10
    北朝鮮を訪問したプーチン、金正恩の隣で「ものすご…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 4
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 5
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 6
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 7
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 8
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 9
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 10
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中