最新記事

景気

回復に実感なし、韓国経済に潜むリスク

予想以上の経済成長を遂げているのに、企業と消費者の間で不安が消えない理由とは

2013年8月19日(月)15時59分
アンソニー・フェンソム

根深い不安 買い物客でにぎわうソウル市内だが、韓国全体の消費者心理指数はアジア平均の半分 Chung Sung-Jun/Getty Images

「アベノミクス」で経済が好転しているにもかかわらず、給料が上がらない、景気回復を実感できない──。そう嘆く日本人と同様に、韓国でも経済の動きと消費者心理には乖離がある。

 韓国銀行(中央銀行)が先週発表した今年第2四半期のGDP成長率は市場関係者の予想を超え、過去2年間で最も高い2・3%(年率、前年比)になった。個人消費と政府支出の拡大により、四半期ベースでは前期比で1・1%の伸び。金融情報サービスのブルームバーグがエコノミストの予想値を平均した0・8%を上回った。

 オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)のエコノミスト、ルイ・ラムとレイモンド・ヤンは今回の発表について、韓国最大の貿易相手国である中国の経済成長が鈍化しているにもかかわらず「堅調だ」とみる。
「韓国経済は景気の底を打ったようだ。今年下半期は、アメリカ市場の回復や補正予算の実行で、緩やかだが成長率はさらに改善するだろう」と、2人はANZのリポートの中で分析している。

 韓国政府も景気刺激の波に乗っているようだ。追加予算を含めた政府支出は、155億ドルと前期比で2・4%増加。韓国銀行は、財政と金融刺激策により14年の成長率は4%に達すると予測する。「今回の経済指標からすると、追加的な金融緩和を求める声は弱まり、韓国銀行は金利を上げるだろう」と、韓国・東洋証券のアナリスト、イ・ジェヒュンはブルームバーグに語っている。

改善しない消費者心理

 だがその一方で、韓国の企業や消費者はいまだ景気回復を実感できないでいる。

 大韓商工会議所が行った調査によれば、9割の企業が「経済の見通しは明るくない」と感じている。調査対象の企業の87%は、売り上げ不振や、注文と利益の減少から景気回復を実感できていない。さらに3割近くの企業は今年下半期に景気が悪くなるとみており、景気改善を見込んでいるのはわずか2割だけだった。

 消費者も先行きには悲観的だ。消費者市場などの調査を行う米ニールセン社の調べによると、韓国の消費者心理(指数)はアジア平均の半分でしかない。韓国の消費者のうち9割は雇用情勢に、8割は消費に対して悲観的な見方をしているという。ニールセン・コリアのシン・ユンヒは、「消費者心理は中国や日本、アメリカで徐々に回復している」と言う。「韓国では厳しい雇用情勢や、多くの世帯で家計が苦しくなっていることから、今のところ改善の兆しは見られない」

 OECD(経済協力開発機構)で事務総長の金融部門特別アドバイザーを務めるエイドリアン・ブランデル・ウィグナルは訪問先のオーストラリアで、円安が韓国や中国、台湾などほかのアジア諸国の経済に打撃を与え続けており、ドル高が始まれば状況はさらに悪くなると話した。

 またオーストラリアン・ファイナンシャル・レビュー誌の取材に対して、「円安がさらに進み、アメリカの景気回復と金利上昇でドル高になれば、アジアにとってダブルパンチだ」とも語っている。

 もう1つの不安要素は、北朝鮮との関係悪化だ。両国は先週、開城工業団地の操業再開をめぐる6度目の南北実務協議を行ったが、結局、議論は平行線に終わった。

 朝鮮半島情勢がまたしても緊張するような事態になれば、韓国経済は円安、ドル高に加えて北朝鮮というトリプルパンチを食らうかもしれない。

From the-diplomat.com

[2013年8月 6日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

タイ中銀、金のオンライン取引監督で権限拡大 バーツ

ビジネス

中国自動車販売、12月は2年ぶり大幅減 25年は3

ビジネス

中国万科、債務再編計画を準備 BBG報道

ワールド

マクロスコープ:中国の輸出管理強化、自民党内に反発
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 5
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 6
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 7
    「不法移民からアメリカを守る」ICEが市民を射殺、証…
  • 8
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 9
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 10
    マドゥロ拘束作戦で暗躍した偵察機「RQ-170」...米空…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 5
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 6
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 7
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 8
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 9
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 10
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 8
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中