最新記事

為替

ソロスが語る13年の日独貿易衝突

日本の「円安誘導」で輸出を取り合うことになれば、ドイツと衝突するかもしれない

2013年2月5日(火)17時04分
ダニエル・グロス(ビジネス担当)

ご意見番 伝説的な投資家ソロスは日独の摩擦を懸念 Pascal Lauener-Reuters

 伝説的な投資家ジョージ・ソロスは引退後の今も、世界経済や市場の動向や政治について発言を続けている。世界経済フォーラムが行われたダボスでも金融ジャーナリストたちと会食し、世界経済のご意見番として鋭い警告を発した。

 欧州中央銀行(ECB)が債務国の国債を買い支える方針を決めたことで、「ユーロ存続が担保され、市場は一息ついた」と、ソロスは言う。だがユーロを救うことで、ユーロ圏の経済は打撃を受け、危険な政治的不均衡が生まれることになった。その結果「13年は波乱の年となる」というのだ。

 ユーロ危機の緩和にドイツが果たした役割はソロスも評価している。問題は、ユーロ救済のためにユーロ圏がドイツなど債権国とギリシャなど債務国に事実上二極分解したことだ。「債権国が主導権を握り、緊縮政策を説いている。これは建設的な施策ではない」と、ソロスは言う。「経済成長なしには膨れ上がった債務は減らせない」

 緊縮政策でユーロ圏はさらなる景気後退に陥り、政治的緊張が高まるというのだ。

 ユーロ各国と他の先進国との間で「通貨戦争が起きかねない」兆候も気掛かりだという。先進国では例外的に、ECBは量的緩和に踏み切っていない。日本ではようやく積極的な金融政策を推進する政権が誕生、円安誘導で輸出振興を目指している。「これがドイツにとって直接的脅威となる」

 日本とドイツは高所得層向け製品の輸出で競合関係にある。円の対ユーロ相場が下がれば、日独間で摩擦が起きる事態も予想されると、ソロスはみる。

 中国も不安材料だ。国内で政治的な不満が噴き出せば、政府が日本など外国との対立でガス抜きを図る恐れがある。「日中間のきしみは世界で最も深刻な対立の1つだ」

「ロシアに投資するのは大きな過ちだ」と、ソロスは言う。プーチン政権は「法を遵守しない」ため、ロシアからは資金と人材が流出し、経済は弱体化する一方だ。「プーチンは身の安全のために権力にしがみついている。いずれ事態は好転するだろうが、時間がかかりそうだ」

 アメリカ経済について、ソロスはおおむね楽観的だ。ソロスによれば、民主党の金融政策は強い味方に支えられている。弁護士、公務員の労組、それに「私のような熱血リベラルだ」。

[2013年2月 5日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送-〔アングル〕イラン戦争でインフレ再燃、トラン

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、中東停戦維持期待で安全資産

ワールド

イラン交渉団がパキスタン到着、レバノン停戦要求 米

ビジネス

米国株式市場=まちまち、中東交渉控え様子見 ハイテ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 4
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 5
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 6
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 7
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 8
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 9
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 10
    アメリカは同盟国の「潜在的な敵」となった...イラン…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 7
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 8
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 9
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 10
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中