最新記事

経営

アップル大物幹部退社で市場に悲観論

地図ソフト「マップス」の失態で退任するフォーストールは、クックCEOの後継候補とも目されていた

2012年11月1日(木)16時53分
アリソン・ジャクソン

投資家も当惑 クックCEOの人事の影響を懸念して、アップル株は大幅に下落した Robert Galbraith-Reuters

 米アップルが29日、2人の取締役が退任すると発表したことを受け、31日のニューヨーク株式市場では同社の株価が大幅に下落した。

 退任するのは、携帯端末向け基本ソフト「iOS」を統括するスコット・フォーストール上級副社長と、小売業務の責任者ジョン・ブロウェット上級副社長。これほど大きな幹部の入れ替えは、スティーブ・ジョブスが亡くなって以来。

 投資家の反応を見る限り、発表から1日以上経っても困惑が広がっているようだ。ハリケーン「サンディ」の影響で、29日から2日間取引を中止していたニューヨーク株式市場では31日、アップルの株価は約3カ月ぶりに終値で600ドルを割り込んだ。

 フィナンシャル・タイムズによると、フォーストールとブロウェットは事実上更迭されたようだ。フォーストールは有力幹部の一人で、ティム・クックCEOの後継者とも目されていた。しかし9月、自ら責任者を務めていた最新版iOSの地図ソフト「マップス」を搭載したiPhone5が発売されると問題が続出。投資家やユーザーから批判が殺到した。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、フォーストールはマップス騒動について公に謝罪する文書に署名することを拒否。その後、クビを言い渡されたようだ。フォーストールは謝罪しなくても問題を乗り切れると主張したが、クックには受け入れられなかったようだ。

「最新版iOSで、グーグルマップの代わりを果たすはずだったマップスのアプリがお粗末だったことは、アップルの面汚しになった」とJPモルガン・チェースのアナリスト、マーク・モスコウィッツはリポートの中で指摘している。「今後リスクとして一つ考えられるのは、フォーストールがグーグルやマイクロソフトなど競合他社に移って、モバイルシステムを手掛けることだ」

 一方、アップルに約半年前に入ったばかりのブロウェットは、会社に馴染まなかったうえ、小売業務の責任者としてミスを犯し過ぎたことが退任の要因になったようだ。CNNによれば、ブロウェットは顧客より利益を優先してアップルストアの人員を削減するなど、誤った方針を次々と打ち出した。
 
 31日、アップルの株価は一時2.7%近く下落。最終的には、前営業日比1.4%安の約595ドルで終了した。

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国万科、債権者が社債償還延期を拒否 「解決策模索

ビジネス

日銀短観、大企業・製造業DIは4年ぶり高水準 米関

ワールド

ベネズエラ同盟国がマドゥロ氏支持表明、米の石油タン

ワールド

ノーベル委、平和賞受賞のモハンマディ氏逮捕を非難 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中